ソウル市路線バス労働組合は12日、京畿道や釜山市など全国21の路線バス労働組合との同時ストを28日から開始すると発表した。この全面ストが実際に行われた場合、路線バス労働組合による史上初の全国レベルの同時多発ストになる。
ソウル市路線バス労働組合は基本給8.2%引き上げ、今の63歳定年の65歳への延長などを要求している。また昨年12月の大法院(最高裁判所に相当)判決に基づき、現在隔月で受け取っている定期賞与を通常賃金に含めることも求めている。これに対して会社側は「組合側の主張を全て受け入れれば、賃金上昇率は事実上25%に達する」とした上で「負担があまりに大きいので、通常賃金などの賃金体系をまず見直した上で、引き上げ率を決めるべきだ」と訴えている。
大法院の判決通り定期賞与を通常賃金に含めるという組合側の主張は一見すると妥当に見える。ただし雇用労働部(省に相当)は昨年2月、この大法院判決について「労使が少しずつ妥協し未来志向的な賃金体系に改編するように」との指針を下した。会社側は「まず賃金体系を見直し、その次に引き上げを」と主張しており、これも一理ありそうだ。では現状はどうなっているのか。
ソウル市によると、ソウル市路線バス運転手の賃金は1年目で年収5400万ウォン(約565万円)だ。就職情報サイトのインクルートが「2025年度公共機関採用情報博覧会」の資料を分析したところ、1年目の年収が最も高いのは中小企業銀行の5466万ウォン(約572万円)だった。ソウル市路線バス運転手全体の平均年収は6300万ウォン(約659万円)だが、これに子供の教育資金、タイへの海外旅行、引っ越し休暇など福利厚生も手厚い。労働時間は1日9時間の2交代制だ。
ソウル市の試算によると、組合側の要求を全て受け入れた場合、賃金上昇率は実質25%に達するという。また定期賞与を通常賃金に含めれば15%の引き上げに相当する。組合側はさらに基本給8.2%引き上げも要求しているが、これが実現すれば年収は6300万ウォンから7900万ウォン(約830万円)に跳ね上がる。
これによりバス運行会社に交付される税金は今の年間5000億ウォン(約523億円)から7800億ウォン(約816億円)に膨れ上がると試算されている。ソウル市城東区の今年の予算は7217億ウォン(約755億円)だ。このままではバス料金の値上げなしには到底持ちこたえられない。路線バス運転手の賃金は準公営制が施行された2004年から年平均3.4%のペースで上がり続けている。昨年も4.48%上がった。
バス運転手の賃金が大企業よりも高くなってはならないとは言えない。ただし忘れてはならない事実がある。ソウル市路線バス運転手の仕事は「税金」で成り立っている。民間企業がバスを運行し、ソウル市が予算を投入して赤字を補填(ほてん)する「準公営制」で運営されているからだ。バスの赤字補填に年間5000億ウォンの税金が投入されているが、それでも負債は累計で1兆ウォン(約1050億円)近くに達している。
このままでは「市民の足」が「市民の足下をすくう」結果になりかねない。昨年も12年ぶりにストが行われ、通勤時に大混乱が発生したが、今年もストが予告されているのだ。
ソウル市は自動運転バスの実験を行っており、商用化もそう遠くはない。路線バスの主人とも言える市民の立場で考えた場合、運転手の給与を上げるには別のところに使う税金を持ってくるか、バス料金を上げるかしなければならない。だとすれば運転手がどうしても人間である必要はあるだろうか。
パク・チンソン記者