電話が嫌で嫌でしょうがない――。
電話がプレッシャーで、若手社員の退職につながるケースもあるという。企業は電話の代行や研修を進めるほど。取材を進めると、SNS世代ならではの「責任感」が浮かび上がった。
「電話応対が嫌で辞める若手社員が増えて、困っている」
企業向けの電話応対研修を行っている「ドゥファイン」(東京都)にはそんな相談が相次ぐ。
同社はメーカーや病院、サービス業などで年間100社以上に固定電話の使い方や話し方の研修をする。「固定電話を初めて触った」と話す若手社員も珍しくない。
この春から都内で働き始めた公務員の女性(27)は自分が話せなくて沈黙が生まれることを恐れる。「対面なら身ぶりや表情で埋められるけど、電話だと本当の空白になってしまう」のだという。
「電話恐怖症」の著書があるカウンセラーの大野萌子さんは10年前、新入社員から「電話が嫌で会社を辞めたい」との相談を初めて受けて驚いた。同様の声が年々増えているといい、若い世代は「言葉の責任感が強まっていると感じる」と言う。
「思いもよらない一言がネット上で『炎上』する社会。普段の会話でも『これを言ってもいいのかな』と異常に気を使う傾向があります」。電話は相手の表情など「分からない」要素が多く、「事前の情報がないことに対して怖がる人が多い」と大野さんは説明する。
電話取り次ぎサービスを展開する企業「ソフツー」(東京都)が2023年、全国の20歳以上の562人にアンケートを行った結果、約6割が電話に苦手意識を感じ、20代が74.8%と最多だった。(富永鈴香、玉那覇長輝)
朝日新聞社