埼玉で在日クルド人の新春祝に現職市議がヘイト行為 条例で規制望む声も


 中東の民、クルドの人々は「国家を持たない最大の民族」と呼ばれる。第一次世界大戦後、列強が引いた国境線によって居住地がトルコとシリア、イラン、イラクに分断された結果、各国で少数民族として迫害されてきた。ネウロズは弾圧から逃れ、散り散りになった異国でアイデンティティを確かめ合う場であり、民族の解放への願いも込められている。

 さいたま市の県営秋ヶ瀬公園には華やかな民族衣装をまとった約1000人が集い、主催した日本クルド文化協会のシカン・ワッカス代表は「クルド民族は苦しみの中でも希望を捨てずにきた。希望を分かち合い、ともに未来へ歩んでいこう」とあいさつした。「ネウロズ、おめでとう」と歓声を上げ、輪になって踊り続けた。

 河合氏はその最中にレイシスト仲間を引き連れて乱入した。「ネウロズの中止を求める」「PKKという反社会組織のイベントを中止しろ」と大声を上げた。PKKはクルド労働者党の略称。トルコからの分離独立を求めて武装闘争を展開したこともあるが、それをテロとみなすのは抑圧する側、殺す側の論理を鵜呑みにする短絡である。そもそも在日クルド人をテロリスト呼ばわりするのは属性を理由に危険視し、排斥を煽るヘイトスピーチにほかならなかった。

 河合氏が妨害を予告していたことから、待機していたカウンター市民がすぐさま取り囲み、追い払った。それでも脅威を感じざるを得ないほど「クルド人ヘイト」は深い傷を刻んでいる。来日29年のクルド人の男性は「年に一度の祭りですら邪魔をされ、この先何をされるのか」と声を落とした。

デマ広め当選、調子づく

 ケバブの出店も並び、日本人も楽しみにしている祭りを守ろうと相模原市から駆けつけた「津久井やまゆり園事件を考え続ける会」の杉浦幹さんも条例の必要性を強調した。「偏見は虐殺にもつながる。払拭するには交流するのが大事だが、差別を広めたいレイシストはだからこそネウロズをつぶしたいのだろう。社会を分断する差別を、ましてや公人にやりたい放題にさせてはならない」

石橋学・『神奈川新聞』記者



Source link