海外での慰安婦像設置を巡り、日本政府は設置先の政府首脳らに撤去を求めるとともに、慰安婦問題に関する日本の立場を国際社会に対して説明する取り組みを継続している。
特にドイツでは、ベルリン市ミッテ区の公有地に韓国系市民団体が約5年前に設置した像が問題となっている。令和4年にはショルツ独首相(当時)が訪日した際、岸田文雄首相(同)が像の撤去を直接要請した。さらに昨年には、上川陽子外相(同)がベルリンのウェグナー市長に対し、問題の解決を求めている。
こうした日本政府の継続的な働きかけが功を奏し、ミッテ区は像の撤去命令を出した。しかし、その後の現地行政裁判所の判断により、像は今年9月までは存続が認められることとなり、現時点では撤去には至っていない状況だ。
ドイツ・ベルリンに設置された慰安婦像と日本政府の撤去要請の取り組みを示す画像
韓国系の市民団体は、各国で慰安婦像の設置を進める活動を展開している。昨年6月にはイタリアにも新たに慰安婦像が設置され、これは欧州の公有地に設置されたものとしては2体目となった。
こうした中、ドイツのボンにある女性博物館において、慰安婦像が恒久的に設置されることが決定した。この事態に対し、日本政府関係者の間では懸念がさらに深まっている。
岩屋毅外相は今月27日の記者会見で、ボンの件について「わが国政府の立場やこれまでの取り組みとは相いれないものであり、極めて残念なことだ」と述べ、強い不快感を示した。また、ベルリンの像撤去を求めてきたこれまでの経緯にも言及し、「これまでもさまざまな関係者に対しアプローチを行い、わが国の立場を丁寧に説明し、強い懸念を伝えてきた」と、政府のこれまでの取り組みについて説明した。
その上で、岩屋外相は慰安婦問題について「今後もさまざまな機会を捉え、国際社会に対しわが国の立場をより明確に説明していく」と改めて強調し、国際社会への説明責任を果たしていく決意を示した。
ドイツ・ボンにある女性博物館で慰安婦像が恒久設置される決定に関するニュースを示す画像
自民党関係者の一人は、この問題について「他国の首脳や政府レベルでは、日本の立場に対する理解は一定程度広がってきている」と評価する一方で、「しかし、一般の世論レベルにまで、われわれの主張が十分に浸透しているとは現状では言いがたい」と指摘し、今後の広報・説明活動の重要性を強調した。国際社会における正確な理解を得るための課題は依然として大きいと言える。