トランプ米大統領は、小売大手のウォルマートが値上げの方針を発表したことを受けて、「関税のせいにするな」と発言し、関税によるコストを自社で吸収するよう要求した。
トランプは米東部時間5月17日朝の「トゥルース・ソーシャル」の投稿で、ウォルマートを名指しして「関税を飲み込め(EAT THE TARIFFS)」と発言し、自身の関税が発動される中で顧客に追加の費用を請求しないよう命じた。
ウォルマートの最高財務責任者(CFO)のジョン・デビッド・レイニーは、15日のCNBCに対し、「この関税の引き上げは、いかなるサプライヤーにも吸収できるものではない。消費者が5月の下旬や6月にかけて価格の上昇に直面することを懸念している」と語った。
ウォルマートのダグ・マクミロンCEOは、15日の第1四半期(2月〜4月)決算の発表にあたって、コロンビアやペルー、コスタリカといった貿易相手国への関税が、バナナやアボカド、コーヒーなどの商品の価格にプレッシャーをかけていると説明した。しかし、同CEOは「当社は、一部の一般商品にかかる関税のコスト圧力が、食品価格にまで影響を及ぼすことを許さない」とも述べていた。
トランプは最近、中国からの大半の輸入品について関税率を30%に引き下げたが、それでもベビーカーやチャイルドシート、玩具といった子ども向け製品の価格は上昇する可能性がある。マクミロンCEOはまた、中国からの輸入が大きな割合を占める電子機器の価格も、関税の影響を受ける可能性があると指摘した。
「ウォルマートは、価格の引き上げを関税のせいにするのをやめるべきだ」とトランプは主張した。「ウォルマートは昨年、予想を大幅に上回る数十億ドル(数千億円)もの利益を上げていた。ウォルマートと中国は、関税を飲み込め! 顧客にはいかなる負担も強いるな。私は見ているぞ。顧客たちも見ているぞ!!!」と、トランプは投稿した。
世界最大級の受託製造企業であり、アップルの主要パートナーでもあるフォックスコンは、最近、業績見通しを「力強い成長」から「一定の成長」へと下方修正した。同社は、米国の関税政策の変動が世界のサプライチェーンに大きな影響を与え、為替相場の変動が不確実性を一層高めていることをその理由に挙げた。
トヨタは、関税の影響で4月と5月だけで少なくとも12億5000万ドル(約1813億円。1ドル=145円換算)の利益を失うと推計しているとウォール・ストリート・ジャーナルは報じた。玩具メーカーのマテルも今月、通年の業績見通しの提示を見送り、「必要に応じて製品の価格を引き上げる可能性がある」としている。
大手企業の間で関税に対する不安が広がっている背景には、トランプが各国に対する関税率を繰り返し変更していることが挙げられる。トランプは、4月に全輸入品に一律10%の基本関税を課すと発表し、国によっては最大50%の関税が適用された。製造大国である中国には一時145%の関税が課されたが、米中の交渉が続く中で90日間の停止措置が合意され、中国製品に対する関税率は30%にまで下がっている。
トランプの関税政策は市場に動揺をもたらし、景気後退への懸念を高めている。専門家は、関税がインフレを引き起こすと警告しているが、トランプ政権の関税方針が頻繁に変わるため、その影響がどの程度になるかを予測するのは非常に困難だ。
Antonio Pequeño IV