122年の歴史が生んだ駅そば
2025年5月11日、岐阜県中津川市のJR中津川駅にある立ち食いそば店「根の上そば」が122年の歴史を終えた。この店は明治時代から続いており、閉店を惜しむ常連客やファンで賑わった。
【画像】「えぇぇぇぇ!」これが江戸川区の「絶品立ち食いそば」です(計12枚)
開業は1903(明治36)年。この年には、英国王エドワード7世がインド皇帝に即位し、大谷探検隊が釈迦の霊鷲山を発見した。夏目漱石は英国留学から帰国し、中央本線の笹子トンネルが開通した。大阪の天王寺公園で内国勧業博覧会が開催され、宇高連絡船も運航を開始した。日本では小学校令改正があり、国定教科書制度が導入された。これらの出来事があったことから、この店の歴史がいかに長いかがわかるだろう。
さて、この店がなぜ多くの人に愛されてきたのか。その理由は、懐かしさや感傷だけではない。駅という特別な場所で、旅人や通勤客に食事を提供し続けたことには、重要な理由がある。
その理由こそが、「なぜ駅そばはうまいのか」という問いに繋がる。
駅そばの歴史
駅そばは、日本の鉄道駅構内で提供されるそば料理で、特に立ち食いそば店が一般的だ。起源は明治時代後期にさかのぼり、軽井沢駅や一ノ関駅、長万部駅などで提供が始まった。
これらの店は、乗客が短時間の停車や乗り換え時間を活用し、手軽に食べられることを目的として発展した。多くの場合、駅弁業者や鉄道事業者が運営しており、もともとは駅弁業者が中心だったが、近年では鉄道事業者のグループ企業が主導している。
1990年代には、JR東日本が駅構内の立ち食いそばを「あじさい茶屋」として統一し、生麺への切り替えなどの改革を進めた。しかし、その後、味の均一化が進んだことで、個人経営の店に戻す動きも出てきた。現在でも、個性豊かな駅そば店が各地に点在しており、多くの愛好者に親しまれている。
日本国内での展開に加え、韓国の主要都市駅には駅うどんとして類似の文化が見られることもある。ラーメンを提供する立ち食い店も存在し、駅ラーメンとして注目を集めている。
地域ごとに特色があり、北海道では濃い黒色のダシが特徴で、東北では伯養軒などが名を馳せている。現在も、多くの地域で駅そばが営業しており、そのバリエーションを楽しむことができる。