ウクライナ国民はしらけムード、トランプ和平交渉への冷めた本音


<ロシア側には戦闘を停止すべき理由がない…ロシアが「既に勝った」と考える訳>

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ロシア人がそう考えるのは、ロシア側に戦闘を停止する確たる理由がないからだ。「戦争がどんな形で終わろうと、(ロシアの)プーチン大統領は画期的成果を上げた。今のアメリカはヨーロッパよりロシアに近づいているように見える。民主化と文化の力というお題目も取り下げた」と、あるロシア人の知人は言う。

私が初めてロシアに行ったのは2011年。数年後、ロシア政府はアメリカとの高校生の交換留学や人権NGO支援といった「ソフトパワー」関連プロジェクトを次々に停止。アメリカ側の猛反発を招いた。

「今のアメリカはロシアの立場を模倣し、世界中に広めている。プーチンがトルコでの協議を呼びかけながら、自分は参加しないと分かっても、トランプは非難せず、(プーチンとの)会談を模索している。(この勝負は)ロシアの勝ちだ」

別のロシアの知人は、停戦に消極的なプーチンの姿勢は全く意外ではないと語った。「アメリカとはまだ友人ではないにせよ、間違いなく敵ではない。ロシアは基本的に関税の適用を免除されているし、トランプはロシアに対するサイバー活動を停止させると言っている」。この知人は、戦争によって新たな富を得たエリート層が戦闘継続を強く支持しているとも指摘した。

つまり、トルコでの協議で事態が大きく改善すると考える合理的根拠はないということだ。世論調査によれば、新たに併合した領土の返還を伴う戦争の終結を支持するロシア人はわずか28%。77%がドンバス地方の返還を拒否している。これが戦争に対する普通のロシア人の本音だ。

私は先日、ある国際会議に講師として出席した。そこで会った数十人のウクライナ人の1人は、今回の協議では100%何の進展もないと断言した。

この人物がロシア政府の行動から学んだ教訓の1つは、彼らが常に真実とは真逆のことを口にすることだという。だから、もしプーチンが停戦を望み、そのためにトルコへ行くと言ったら、実際には停戦を望んでいないし、トルコにも行かないということになる。もちろん、この予測は的中した。

もう1人は、ロシアがわざと地位の低い交渉団をトルコに送り込み、まだ支配してもいない土地の割譲など、滑稽な要求をするだろうと正確に予測した。さらに別のウクライナ人は、ロシアの帝国主義的傾向から見て、少なくともウクライナの東部全体と南部の大半を事実上分割するまで攻勢を止めないのは明らかだと言った。

彼は「プーチンの頭脳」と呼ばれるウラジスラフ・スルコフ元大統領補佐官のコメントを例に挙げた。スルコフは最近、ウクライナは「人工的な政治的実体」であり、「ウクライナの軍事外交的圧殺」は不可避だと欧米の雑誌に語っている。

世論調査の結果を見ても、トランプの調停努力が不公正な和平につながることを懸念するウクライナ人は50%以上。公平なディール(取引)が期待できるという回答はわずか3%だった。82%はロシア側の停戦案を拒否しており、賛成派は10%にすぎない。回答者の78%は紛争地域からの軍の撤退と領土の割譲に反対している。

この戦争がすぐに終わる可能性は低い。そしてロシアは「凍結された紛争」の達人だ。アメリカが全面的にウクライナと協力しない限り、ウクライナに有利な結果が得られる可能性は遠のくばかりだろう。

サム・ポトリッキオ(ジョージタウン大学教授)



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