(福島 香織:ジャーナリスト)
今に始まったことではないのだが、2021年あたりから中国では私立小学校が次々と閉鎖されている。これは習近平の教育政策の一環であるのだが、中国の中産階級家庭からは大きな反発が起きている。
【写真】中国人民政治協商会議をモニターで見学する小学生ら=2024年
先日も、河北省南宮市が突然、市内でも人気の私立小学校の閉鎖を命じ、1000人以上の保護者達が激しい抗議活動を行った。この騒動はすぐに沈静化した、と報じられているが、中国でなぜ私立学校の閉鎖が相次いでいるのか。そして、保護者たちの怒りの理由は何なのか、を改めて整理してみたい。
事件は5月、河北省南宮市の豊翼小学校が突然市政府から閉校を通達されたことから始まった。
閉校の理由は昨今、教師の質と量が全国的に足りておらず、給与格差のある公立校と私立校で、教師の質の格差、それに伴う教育の質の格差が広がっていたことから、市政府が公立校に優秀な教師を確保するため私立校を制限、あるいは閉校にすることにしたからだった。
だが、この政府の決定は事前に保護者に対して説明なく行われたので、5月11日、この閉校に反対する保護者たち1000人以上が市政府庁舎前に詰めかけ抗議活動を行った。この講義活動の動画などがSNSを通じて発信されると、同じような私立校の閉鎖に不満を募らせていた中国人たちの間で拡散され、海外メディアも注目する事態になった。
百度百科によれば豊翼小学校は中国の私立ブランド校で、1997年創業の豊翼教育集団が運営。この小学校を含めて河北や広東に幼稚園、中学校など7校(在校生1.6万人)を運営している。
この豊翼小学校は、特に数学のレベルが高いことで知られていた。入学者枠に制限があるため、保護者たちは公開の抽選会に申し込んで、その抽選に当選しなければ入学できない。そうして、狭き門をくぐってやっと入学できたのに、突然、学校が閉校になるということで保護者たちは混乱。普通の公立学校に転校は可能だが、豊翼小学校ほど教育レベルが高くないと、保護者達の怒りが爆発したらしい。