参院選を控え、自由民主党の森山裕幹事長の地元である鹿児島選挙区(改選数1)で予想外の事態が生じています。長年にわたり自民党が議席を守ってきたこの選挙区において、野党の協力体制構築や新たな保守勢力の急速な台頭が重なり、自民党の候補者が苦戦を強いられています。石破茂政権の主要人物である森山氏にとって、地元選挙区での敗北は今後の政権運営に暗い影を落とす可能性があり、森山氏は危機感を募らせ、頻繁に鹿児島入りを繰り返しています。
参院選鹿児島選挙区で自民候補の応援演説を行う森山裕幹事長
鹿児島選挙区で生じている「異変」とは
7月10日に鹿児島市内で開催された自民党元職候補の演説会で、森山幹事長は「本当に厳しい戦いだ。何としても勝ち抜かなければならない」と支持を訴えました。これは、事前の情勢調査で無所属新人がリードしているとの情報があることを踏まえた発言です。
昨年の自民党鹿児島県連による参院選候補者公募では、最終的に現候補である元職が選ばれました。しかし、この公募から漏れた別の新人が立憲民主党の推薦を得て立候補することが明らかになると、自民党内に動揺が広がりました。この新人が、今期限りで引退する自民党の尾辻秀久前参院議長の三女であることが、その驚きの背景にあります。さらに、共産党も候補者擁立を取り下げたことで、立憲民主党と共産党は事実上、候補者を一本化する形となりました。自民党陣営は尾辻氏本人は娘を支援していないと強調していますが、無所属新人の事務所には尾辻秀久氏の支援者からの応援ポスター「為書き」が掲示されており、これが保守層の票を取り込む狙いがあることは明らかです。
新興勢力の台頭と保守票の分散
自民党の伝統的な支持層と重なる参政党の存在も、今回の選挙戦における自民党の脅威となっています。参政党からは新人が出馬しており、森山幹事長は7月9日の記者会見で「データで参政の数字が急激に上がっている」と述べ、懸念を示しました。このように、保守票が複数の候補に分散する構図が、自民党候補の苦戦に拍車をかけています。
森山幹事長の立場と選挙結果が持つ意味
森山氏は、少数与党である石破政権において、党の運営や国会対応を一手に引き受ける要の人物です。野党との間で太いパイプを持ち、石破首相自身も周囲に「幹事長がいるから自民党は持っている」と語るほど、森山氏への信頼は厚いとされます。しかし、万が一参院選で自身の地元選挙区を落とすことになれば、「選挙に弱い幹事長」という不名誉な烙印を押されてしまいかねません。
森山氏は次の週末も鹿児島入りを検討するなど、地元での巻き返しに必死です。幹事長という役職上、本来は全国各地を回り参院選の陣頭指揮を執る立場にありますが、自身の地元、しかも過去24年間負け知らずだった1人区の「保守王国」に何度も足を運ばなければならない現状は、まさに自民党の苦境を物語っています。
記者会見で森山氏は「自分の選挙区で責任を果たさなければならない」と決意を強調しました。しかし、県連関係者からは「(票が)削られるばかりだ。差を縮める要素がまだ見つからない」といった諦めにも似た声が漏れており、表情を曇らせています。(今仲信博)
Source link: https://news.yahoo.co.jp/articles/f9c274e4ae5dc3c5d2000a3cd08eb91d557d869a