【ロンドン=黒瀬悦成】スターマー英政権は22日、1965年に併合したインド洋の戦略的要衝、チャゴス諸島の領有権を放棄し、モーリシャス政府に移譲する合意文書を同国政府と交わした。英政権は同時に、同諸島で最大のディエゴガルシア島にある英軍基地を今後99年間にわたり租借することでモーリシャス政府と正式合意した。
元々は英領モーリシャスの一部だったチャゴス諸島は、モーリシャスが1968年に独立する3年前に英国領に組み込まれた。同諸島の住民はモーリシャスなどに強制移住させられ、旧島民の救済などに向けてモーリシャスと移譲交渉が長年続けられてきた。
一方、ディエゴガルシア島の基地は、米英軍が共同利用するインド洋の重要拠点で、過去には2001年の米中枢同時テロを受けたアフガニスタン空爆で使用された。最近もイエメンの親イラン民兵組織フーシ派に対する攻撃の出撃基地となった。
英政府はモーリシャスに対し、年間約1億100万ポンド(約195億円)を支払う。ヒーリー英外相は「基地の運用権限は英国が全面的に維持する」とした。
スターマー英首相は記者会見で、中国のインド洋進出を念頭に「合意が成立しなければ他国が島に基地を設営するのを阻止できなかった」と述べた。また、ディエゴガルシア島の基地を維持したことで「向こう数世代にわたって英国の安全を確保できることになる」と強調した。