一時停止「律儀に止まると左右が見えない」問題:元警察官が解説する正しい停止方法

先日、SNSである自動車学校が一時停止の方法について注意喚起を行った投稿が話題となりました。これに対し、「停止線で律儀に止まると塀などで左右確認ができないから、見える位置まで進んだ方が安全ではないか」というユーザーからの疑問が寄せられ、議論を呼んでいます。確かに運転者としては安全確認を優先したい気持ちも理解できますが、道路交通法上、一時停止はどのように行うのが正しいのでしょうか。元警察官としての知見も踏まえ、一時停止のルール、停止線が見えにくい位置にある理由、そして安全かつ合法的な一時停止の方法について解説します。

一時停止の基本的なルールと罰則

道路交通法第43条では、一時停止が指定されている場所では「道路標識などによる停止線の直前で一時停止しなければならない」と明確に定められています。停止線がない場合は、交差点の手前で一時停止が必要です。このルールに従わない場合、罰則が科せられます。原則として「3月以下の拘禁刑または5万円以下の罰金」ですが、多くの場合は交通反則通告制度に基づき反則金が課せられます。反則金は普通車で7,000円、二輪車で6,000円、原付で5,000円です。これに加え、違反点数として2点が加算されます。

なぜ見えにくい位置に停止線があるのか?設置基準の理由

停止線の直前で停止すると、建物や塀などの障害物によって左右の安全確認が十分にできない場所が存在します。「なぜもっと先、左右が見える位置に設置しないのか」と疑問に思う方もいるでしょう。停止線の設置場所には、国土交通省が定める基準があります。重要な点として、「交差道路側の走行車両を視認できる位置」に設置することが標準とされている一方で、「交差道路側の右左折車の走行に支障を与えない位置」であることも求められます。この二つの基準は時に相反します。もし左右確認ができる位置まで停止線を前に出しすぎると、一時停止した車両が交差道路から曲がってくる車や歩行者の妨げになる交差点が多く存在します。また、交差点に横断歩道がある場合も、その手前2メートルに停止線を設置することが標準とされており、この位置が必ずしも左右確認に最適な場所ではないこともあります。このように、全ての交差点で安全確認と交通の流れを両立できる完璧な位置に停止線を設置することは、構造上難しい場合があるのです。

一時停止標識と停止線。律儀に停止線で止まるか、左右確認のため先に進むか悩むドライバーの様子をイメージさせる画像一時停止標識と停止線。律儀に停止線で止まるか、左右確認のため先に進むか悩むドライバーの様子をイメージさせる画像

左右が見えなくても安全に一時停止する方法(二段階停止)

では、停止線の位置では左右の安全確認が困難な場合はどうすれば良いのでしょうか。法律を守りつつ安全を確保するための方法が「二段階停止」です。まず、最初の段階として、必ず停止線の直前で完全に停止します。これは法律で定められた義務を果たすためです。一時停止の標識や停止線があるにも関わらず停止しないのは明白な違反となります。次に、停止線で安全確認が十分にできない場合は、そこからゆっくりと車を前進させ、左右の安全が十分に確認できる位置まで移動します。そして、その場所でもう一度確実に安全確認を行います。この「停止線での一時停止」と「安全確認ができる位置での再停止・安全確認」という二段階の操作を行うことで、法律上の義務を果たしつつ、実際の安全も確保することが可能となります。重要なのは、最初の一時停止を怠らないことです。安全確認は確かに重要ですが、法律で定められた停止義務を果たした上で、さらに安全を追求するのが正しい手順です。

結論

一時停止の標識や停止線がある場所では、まず停止線の直前で完全に停止することが道路交通法上の義務です。たとえその位置で左右の安全確認が難しくても、この最初の停止は必須です。安全確認を優先して停止線を超えてしまうと、法律違反となります。安全かつ合法的に一時停止を行うためには、停止線での一時停止に加え、必要に応じて安全確認ができる位置までゆっくり進んで再度停止し、左右を確認する「二段階停止」が推奨される方法です。ルールを守り、さらに安全確認を徹底することで、見通しの悪い交差点でも事故を防ぐことにつながります。

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