マンション高層階から“小学生”が泥団子、頭部直撃の男性に「重傷・後遺症」を…加害者に“責任能力なし”被害者救済どうなる?


【図解】少年事件の一般的な流れ

当初、児童は泥団子を投げたことを否認していたものの、後に母親に対し自分の行為であることを認め、母親が警察に通報。児童は「駐車場の先にある川に向かって投げたが届かなかった。下に人がいると分かっていた」と供述し、現場検証をしていた警察官や被害男性に水をかけた疑いも持たれている。

被害者の男性は、児童の母親から謝罪したいとの連絡を受けたが、後遺症に苦しんでおり、罪に問えない年齢の子どもの加害行為に対する複雑な心境を語っている。

警察は「殺人未遂」疑いでも捜査

「前提として、事件発覚後の手続きは異なるものの、成人であっても少年であっても、適用される刑法の内容自体が変わるわけではありません。

今回のように、頭という体の重要な部分に物をぶつける行為は、人を死に至らしめる危険性があるという考え方もできます。そのため、殺人未遂罪の検討がまったく的外れというわけではありません。

ただし本件では、当初何がぶつけられたか不明で、さらに報道によれば、落下物が『破裂した』という被害男性の話もあったため、警察が殺人未遂の可能性も視野に入れて捜査を始めたのだと考えられます」

泥団子は作ってから時間が経ったもので、陶器ほどの固さだったとも言われているが、「もし最初から『泥団子だった』と分かっていれば、殺人未遂の疑いは持たれなかった可能性が高い」(杉山弁護士)という。

加害児童は今後どうなる?

とりわけ14歳未満の子どもは刑事責任能力がないと判断されるため、刑罰を科されることはなく、また当然に家庭裁判所に行くわけでもない。このような子どもは「触法少年」と呼ばれ、警察から児童相談所へと通告される。

児童相談所は、その子の保護や健全な育成のために何が必要かを調査し、指導や一時保護、あるいは児童福祉施設への入所といった措置を検討することになる。事件が重大な場合や、より専門的な判断が必要と判断された場合は、児童相談所から家庭裁判所へ送致されることもある。

家庭裁判所では、審判を経て保護観察や少年院送致などの保護処分が決定される可能性があるが、いずれにしても刑罰が科されることはない。これは、子どもが未熟であるという考えに基づき、刑罰よりも支援と育成を重視する考え方によるものだ。

今回の加害児童についても、「触法少年」として児童相談所に通告されたと報道されている。報道されている事情から、今後の展望について質問すると、杉山弁護士は次のように回答した。

「そもそも、当該児童がどのような目的で、どのような方法で泥団子を投げたかといった『行為の悪質性』については、今後の事実認定によって変わる可能性があります。結果として被害が重かったものの、児童自身が自らの行動の危険性を十分に理解していなかった、という背景も考えられます。

また、今回は児童本人が保護者に告白し、保護者がその告白を受けて警察に届け出ている様子が見られることから、児童本人や保護者の性質について、その可塑性を否定するような大きな問題があるとは言いがたい、と判断される可能性が高いでしょう。

このような状況から、家庭裁判所に送致され、さらに重い処分が下されるといった展開は、あまり想定されません」

少年事件のもっとも大切な部分は、処分を下すまでの過程でさまざまな情報を引き出し、将来同じような問題が起きないよう、子どもをケアすることにある。

「そのため、『最終的な処分が重いか軽いか』という点について論じること自体、少年事件の本来の目的とは少し異なります。十分な問題への対処がとれたから、処分が軽かったり不要になっていたりする場合もあるわけです」(同前)



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