江藤拓前農水相の後継に21日、小泉進次郎農水相が就任した。2人を巡っては約10年前、小泉氏が自民党の農林部会長に就いた頃、関係は良くはなかった。江藤氏は「お前なんか嫌いだ」と伝えたのに対し、小泉氏は独特の「コミュ力」を発揮し、懐に入り込んだ経緯がある。党政調会長室長を務めた政治評論家の田村重信氏が明かした。
平成27年10月に農林部会長に就任した小泉氏は当選3回の34歳で、部会メンバーの江藤氏は21歳年上。既に農水政務官、農水副大臣、農林部会長を歴任し、生粋の農水族として知られた。
江藤氏は当時、小泉氏に対し「調子に乗って飛ばさない方がいい」と助言に嫌みを漂わせ、話すときは目を見ず、面と向かうと「お前のことなんか嫌いだ」と言い放ったという。
因縁もあった。平成17年7月、 小泉氏の父、純一郎首相(当時)が注力した郵政民営化法案に反対票を投じ、江藤氏は2期目を目指した同年9月の衆院選で党公認を外された。
江藤氏は「刺客」を退けて当選を果たしたが、その後、約1年間離党を余儀なくされた。
田村氏は江藤氏について「政敵の息子と考えていたのかもしれない」と推察するが、小泉氏はきつく当たってくる江藤氏に対し、避けもせず反抗もせず、逆に距離を縮めるように努めたという。
「陰で悪口をいわれるより、面と向かっていってくれた方がうれしい」
「今度飯に連れていってください」
小泉氏がこう話すと、江藤氏は「お前は気持ち悪い奴だな」とまんざらではなさそう。サシで食事に連れて行き、その後、2人は部会で意見をぶつけ合う間柄になったという。
田村氏は2人について「人間関係ができている。江藤氏も自分の後を小泉氏が継いだことをよく思っているのではないか」と述べ、「農政を改革しようとする気質は一緒だ」と共闘に期待を込める。
田村氏は、政治家のエピソードを紹介する自著「気配りが9割」(飛鳥新社)で収録した唯一の対談相手に小泉氏を選ぶほど、小泉氏を高く評価していることで知られる。(奥原慎平)