「トランプは肉体労働を米国に取り戻せない」と著名学者が断言する理由


トランプ復権を担った「若者たち」の心理

【画像】フクヤマの指摘「製造業を米国に取り戻しても、男性が大黒柱になることはないだろう」

その理由に、彼らの多くが従事する肉体労働が近年の米国で姿を消している点がある。自分たちが担える仕事が減り、社会的にも経済的にも取り残されていると感じる男性が増えたのだ。

事実、米紙「ワシントン・ポスト」は、米国の男性の失業や違法薬物の使用、自殺などの問題が深刻化していると報じている。また、近年では女性のほうが男性より高い教育を受けているという調査結果もあり、女性が労働市場で優位に立っているとも同紙は指摘する。

だからこそ、前述のような米国の若者たちは、米国に製造業(肉体労働)を取り戻そうとするトランプを「自分たちの擁護者」として見ている。トランプは昔ながらの男性像を前面に押し出し、経済的地位の低下や疎外感に悩む男性たちの不満を取り込んだのだ。

トランプは敵を見誤っている

一方、トランプは原因を見誤っていると指摘するのは、政治学者のフランシス・フクヤマだ。彼は「製造社会」から「情報社会」への移行が、女性の労働参加を促した要因であると説く。

フクヤマは、トランプが米国に製造業を取り戻すとして世界への相互関税を発表した日に掲げた「解放の日」は、ジェンダーや産業の変化に対する誤った理解に基づいていると、メディア「パスエイジョン」で批判する。

新しい経済では、工場での「肉体労働」よりオフィスで「頭脳」を使う仕事が増えた。フクヤマは、若い女性が若い男性よりもこの種の仕事に適していたと書く。

また、避妊薬の登場が性と生殖の分離を可能にし、女性の経済的自立とも相まって、伝統的な家族形態は大きく変化した。つまり、ジェンダー観や産業が大きく変わったのは、テクノロジーの台頭が主因であるということだ。

COURRiER Japon



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