ロシアがウクライナ侵略後の3年余りで、3兆9千億ルーブル(約7兆3千億円)に上る民間資産を接収していたことがロシアの民間調査で分かった。ロシア撤退を受けて差し押さえた海外企業の資産のほか、幹部の腐敗などを名目に国有化した国内企業の資産も含む。6月に報告書を公表したモスクワのNSP法律事務所は「大規模な国有化が進んでいることを示している」としている。
接収された資産のうち約1兆5千億ルーブルは、政府が戦略的に重要とみなした企業を政府の統制下に置くことを認める法律に基づいて接収された。戦争の長期化を受け、プーチン政権が民間経済への統制を強めているとみられる。
報告書によると、プーチン政権はウクライナの全面侵攻を始めた2022年2月以降、企業資産の国有化を進め、これまでに102企業の資産を接収した。企業幹部の腐敗を名目に接収された国内企業の資産は、計1兆ルーブル以上という。
幹部の腐敗のほか、企業運営の不手際や民営化の手続き違反の、過激派との関係を疑われたとして資産が接収された例もあった。
政府はロシアから撤退した海外企業の資産の国有化も進めており、プーチン大統領は23年、海外企業の資産の接収を一時的に認める大統領令に署名。その後、デンマークのビール会社「カールスバーグ」など16社の海外企業の資産を国有化した。16社には、日本の工作機械製造会社「DMG森精機」の子会社も含まれる。
ロイター通信によると、ロシアの検察当局は今月3日、国内の金製造大手の経営権を政府に委譲するよう求める訴えを裁判所に起こしており、企業資産の国有化は今後も進むと見込まれる。(荒船清太)