【ニューヨーク=金子靖志】米連邦地裁は23日、トランプ米政権によるハーバード大の留学生受け入れ停止措置を一時差し止める決定を下した。徹底抗戦の構えの大学側と、大学への統制を強めたい政権との対立は一段と先鋭化しており、着地点は見えていない。
「政権が教育内容や教職員、学生への違法な統制を押しつけようとしている」。ハーバード大のアラン・ガーバー学長は23日、政権の措置に強い懸念を表明した。「全米の留学生にとっても深刻な警告だ」とも述べ、訴訟を通じて対抗する姿勢を鮮明にした。
一方、政権側は、パレスチナ自治区ガザ情勢を受けた学生の抗議活動を巡り、反ユダヤ主義への対応が不十分だとして、「反ユダヤ主義対策」の名目で大学の学内統制の強化を進めようとしている。大学側はこれを「表現の自由の侵害だ」として断固反対しており、双方の主張は平行線をたどっている。
政権は4月以降、同大に対する補助金の凍結を段階的に進め、凍結額は30億ドル(約4300億円)近くに達した。今回の措置は、大学の財政を支える柱である留学生の締め出しを狙ったものと受け止められている。
政権は、アイビーリーグと称される米北東部の名門大を中心に、補助金を凍結するなどして圧力を強めているが、中でもハーバード大の動向は「試金石」として注目を集めており、同大は政権の要求に「譲歩の余地はない」との立場を貫く考えだ。