米メディア「アクシオス」は23日、トランプ政権が外交や安全保障政策の調整を担う国家安全保障会議(NSC)の大規模な再編に乗り出したと報じた。大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を兼務するルビオ国務長官が主導し、約350人の職員を半減させる方針だという。政権高官はアクシオスに「NSCは究極の『ディープステート』(影の国家)だ。我々は取り除く」と強調した。
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NSCは外交・安保戦略に関して調整や大統領への助言などを行う重要組織。一方で、国務省や国防総省と役割が重複する役職があるなどとして、規模の縮小を求める声もあった。アクシオスによると、政権はNSCについて「(政権と)ビジョンを共有していない官僚で占められている」とみており、トップダウンで意思決定する姿勢を鮮明にしている。
ロイター通信などによると、ウクライナ情勢やカシミール問題などを担当する職員も削減の対象となっているという。職員の多くは国務省や国防総省などから派遣されており、削減対象の職員は派遣元に戻るとみられる。最終的には50人程度まで縮小される可能性もあるという。
トランプ政権内には、トランプ大統領に忠誠を誓い国内問題を最優先する「MAGA(マガ=米国を再び偉大に)派」や、米国は国際問題に関与すべきだとする「タカ派」など複数の勢力がせめぎ合っているとされる。
最近はMAGA派の影響力の大きさが目立ち、今月初めには「タカ派」のウォルツ大統領補佐官(国家安全保障問題担当)が解任された。直接的には、一般通信アプリ「シグナル」で記者に誤って軍事情報を漏えいしたことが原因とみられるが、背景にはMAGA派との路線対立があったと報じられている。
また、米メディアによると、NSCでは高官を含む複数の職員がすでに解任されている。トランプ氏の熱烈な支持者で陰謀論者として知られる右派の活動家ローラ・ルーマー氏が「(トランプ氏に)忠実ではない」などと解任を進言したとされる。
ルビオ氏はウォルツ氏の後任として大統領補佐官を暫定的に兼務している。ルビオ氏も「タカ派」とされるが、最近はMAGA派に近い立場を取る。トランプ氏の信頼が高まっているとされ、アクシオスによると、トランプ氏はできるだけ長くルビオ氏を兼務させたい考えだという。【ワシントン松井聡】