長野県須坂市小山で21日、走行中の長野電鉄長野線の普通列車に金属製のパイプ小屋が衝突し、乗客の男性3人が死傷した事故で、列車は雨風の影響で事故前に約4分間、運転を見合わせた後に再開していたことが23日、長野電鉄への取材でわかった。県警は、当時の運行状況を調べている。一方、小屋の所有者の男性も取材に応じ、事故当時の状況などを証言した。
列車は午後5時22分信州中野駅発長野駅行きの普通列車(3両編成)。長野電鉄によると、午後5時39分、運転士から「雨風が強く、視界が悪い」と運転指令室に連絡があり、約4分間、北須坂駅で一時停車した。その後、状況の改善がみられたことから運転を再開。事故はその約7分後に起きたという。
長野電鉄によると、同社が持つ風速計は事故現場から約2キロ離れた長野市と須坂市にまたがる「村山橋」付近に設置されている。同社は内規で、気象庁のデータなどを参考に、瞬間最大風速25メートル以上を観測した場合、運転を見合わせることにしている。事故当時、警報が鳴るなどの状況はなかったとしている。
事故は、小屋が強風で線路内まで飛ばされ、列車と衝突して起きたとみられる。この小屋の所有者の農業男性(40)は23日、取材に応じ、事故当時は小布施町内にある自身の畑で作業をしていたと語った。「小布施でもとんでもない風だった」とし、小屋が飛ばされたことについては「あれほどの重たいものが飛ぶような風が吹いたのは初めてだ。全部が飛んで、恐らく線路上に散乱してしまったのだろう」と語った。
男性によると、小屋は、畑を耕すためのトラクターを保管するため、ホームセンターで購入した約20本の金属製のパイプを使って建てたという。男性は「小屋が飛ばされて列車に当たった実感はないが、亡くなった人がいるのは残念だ」と肩を落とした。
事故では長野市安茂里、会社員栗原雄二さん(56)が死亡した。栗原さんを知る近くに住む80歳代女性によると、栗原さんは道で会い、あいさつをすると必ずにこやかな顔で返事をしてくれたという。女性は「本当にかわいそう。私も含めてショックを受けている。どうしてこんなことになってしまったのか」とつぶやいた。