「東日本大震災で大儲けした」イギリス人が語る「トップトレーダー」たちのリアル、彼らはどうやって“恐ろしくなるほど”儲けているのか


【写真】本書には転勤先だった日本での暮らしについても長く綴られている。「カラシビ味噌らー麺 鬼金棒」のラーメンはお気に入りの1つ

■トレーディングの現場は「マクベス」の世界

 ──トレーダーの仕事や生きざまがリアルに描かれています。

 世界中の超優秀な若者が「トレーダーになって成功したい」と集まっていた。最高の成績を取って最高の職を得るために、異常なほどの努力をしていた。それは執念であり、野心であり、狂気に近い。トレーディングの現場は野心と慢心にあふれていた。

 本作の中で同僚の一人が吐いたセリフがこの本を象徴している。「誰かと出会うと、その瞬間に、相手が俺より上なのか下なのか、知りたくてたまらなくなる」。これは「個人主義への執着と競争への執着の末路」の話だということ。まさに映画『バトル・ロワイアル』(2000年公開)のような世界だ。

 あの映画は西洋的な経済思想、つまり個人主義と競争中心の価値観に対する日本からの批評ではないかと思っていた。僕の本もそういう価値観を批判したかった。

 若者たちに「人生は『誰よりも優れること』『勝つこと』『1番になること』がすべてだ」と教えたとして、それが行き着く先は何か。人生を「勝つこと」に捧げると、誰と会っても心の中で「コイツは自分より上か?  下か?」って判断するようになる。自分の存在の核が競争になってしまう。

 ──「病」ですか。

 この本を出した後、一緒に働いていたトレーダーたちが「ギャリーは優秀なトレーダーじゃなかった」と言い始めた。それこそが、僕が言いたいことを示している。金融業界の人たちはこの本を読んでもまだ、「ヤツは自分より上か、下か」ってことしか考えられない。それこそが、この本が書いている「病」そのものだ。



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