『続・続・最後から二番目の恋』(フジテレビ系)が盛り上がっている。なにしろ、シリーズ3作目だ。すでに確かな固定ファンを獲得しているのは間違いない。古都・鎌倉を舞台に、中年以降の穏やかで優しい“恋愛未満”の物語が展開されるこのドラマは、働く女性たちを中心に、共感と憧れをもって支持されている。
【写真】女性の労働問題を考えさせられる『続・続・最後から二番目の恋』
ところで、本作は女性の労働問題に切り込んだ作品でもある。小泉今日子演じる主人公・吉野千明は、いわゆるキャリアウーマン。そのため、お仕事ドラマとしての側面も色濃い。本作の千明は今、テレビ局を定年まで勤め上げようとしている59歳。ということは、就職したのは1989年頃だと推定される。1986年に男女雇用機会均等法が施行され、女性の総合職での採用が始まり、その後20年を経て女性管理職が生まれ始めた世代になる。
この世代は、就職した頃は景気が良かったが、1991年にバブルが崩壊、その後の経済は低迷を続ける。2012年の第1シリーズで45歳だった千明はドラマのプロデューサーだが、少しずつテレビ業界に暗雲が漂い、視聴率の低迷に苦心している。2014年の第2シリーズではドラマ部制作部長に昇格しているが、制作予算を削減され、印鑑を面倒くさそうに押す姿が印象的だった。放送中の第3シリーズでは、ゼネラルプロデューサーになっているわけだが、「テレビ局マジでやばくない?」「今どきテレビみる人とかいるんすか、とか(言われて)」と、現状を嘆く姿が映し出された。
就職こそ上手くいった千明の世代も、その後の職場環境は決して良くはなかった。右肩上がりだった時代はとうに過ぎ、競争は激化して、やってもやっても結果は出ない。ブラックな働き方が横行し、仕事のためにプライベートを犠牲にし、結婚も出産もせず、家族を作らずに男性的な働き方を強いられながら突っ走ってきた世代。『最後から二番目の恋』は、その悲哀を描いてきたドラマでもある。特に3人のキャリアウーマンの女子会は、その象徴だ。
この家庭を作らずに管理職になった上の世代の女性について、現在放送中の『対岸の家事〜これが、私の生きる道!〜』(TBS系)でも、シンクロするような物語があった。第6話で、ワーキングマザーの礼子(江口のりこ)が、社内で初の女性管理職となった先輩社員・陽子(片岡礼子)に新入社員のロールモデルとして講演を依頼する。しかし、年配の男性上司は、陽子が独身で出産・育児の経験がないことを理由に「ロールモデルにはふさわしくない」と却下。代わりに、家庭を持ち子育てをしながら働く礼子自身に講演をするよう命じるのだ。逆に陽子は、仕事に厳しいゆえに部下からのパワハラ告発を受け、出世どころか出向を命じられてしまう。
陽子は、『最後から二番目の恋』の千明より少し下の世代ではあるが、家庭を作らずに仕事に邁進してきた「なれの果て」であることに変わりない。女性活躍、女性初の管理職と持ち上げられてきたのに、時代が代わり、急に分が悪くなってしまった。ライフを犠牲にして働いてきた女性たちは、若い世代から「そうまでして仕事をしたくない」「ワークライフバランスが取れていない」と、目標どころか諸悪の根源のように言われてしまうようになった。