座間9人殺害、白石隆浩死刑囚の死刑執行:事件経緯と裁判

2017年に神奈川県座間市のアパートで9人を殺害したとして強盗・強制性交殺人罪などで死刑が確定した白石隆浩死刑囚(34)の死刑が、27日執行されました。SNSで自殺願望を投稿していた男女が相次ぎ犠牲となったこの事件について、改めてその経緯と裁判をたどります。

事件の発覚と捜査

事件が発覚したのは2017年10月30日です。数日前から所在不明になっていた東京都八王子市の女性(当時23)の行方を追っていた警視庁の捜査員が、女性のSNSでのやりとりを手がかりに座間市の木造アパートを突き止めました。

住人だった白石死刑囚に対し追及したところ、当初は否定しましたがまもなく自白を開始。その説明通り、室内からは行方不明女性を含む9人分の遺体の一部が発見されました。白石死刑囚は翌31日未明、死体遺棄容疑で逮捕されました。

座間9人殺害事件の白石隆浩死刑囚の顔写真座間9人殺害事件の白石隆浩死刑囚の顔写真

最初の犠牲者と犯行の動機

9人の被害者のうち、最初に犠牲となったのは神奈川県内の女性(当時21)でした。白石死刑囚は2017年8月、ツイッター(現X)で自殺願望を投稿していたこの女性に接触。悩みを聞き、説得して自殺を思いとどまらせた上で、同居を持ちかけ、アパートの費用などを借り受けました。

いずれ女性が自分から離れると感じた白石死刑囚は殺害を実行。アパートの費用返済を免れようとしたことが動機の一つとされます。この最初の犯行で、性的快感と金銭を得たことに味をしめ、同じような手口で犯行を続けることを決意したと供述しています。

その後の犯行と手口

最初の犯行後の約2カ月間に、白石死刑囚はSNSで自殺に関する投稿をしていた他の7人の女性に接触。性的暴行を加えて殺害したうえで、所持金を奪いました。さらに、被害者の知人だった男性1人を口封じと現金奪取のために殺害。これにより、合計で9人もの若く尊い命が奪われることになりました。

裁判での争点と判決

東京地裁立川支部で開かれた裁判で、弁護側は被害者全員が殺害に同意していたとして、法定刑の比較的軽い承諾殺人罪の適用を訴えました。

これに対し、2020年12月の判決は、被害者に殺害の承諾はなかったと認定。金銭・性目的で計画的に実行された「身勝手な犯行」であると断罪しました。特に「精神的に弱っている被害者を巧みに誘い出す手口は狡猾(こうかつ)、巧妙で卑劣というほかない」と厳しく非難しました。また、SNSの利用が当たり前になっている社会に大きな衝撃と不安感を与えた事件であると指摘しました。

死刑確定までの経緯

判決は、「9人もの若く尊い命が奪われた結果は極めて重大」であり、「犯罪史上まれに見る悪質な犯行」であるとして白石死刑囚に死刑を言い渡しました。

弁護側は判決を不服として東京高裁に控訴しましたが、白石死刑囚本人が控訴を取り下げました。これにより、東京地裁立川支部の死刑判決が確定し、2021年1月5日午前0時に刑が確定しました。今回の死刑執行により、一連の刑事手続きは終結しました。

出典:朝日新聞社