今年の卒業式を間近に控え、キャンパスの飾りつけも進むハーバード大学に対して、5月22日(現地時間)、クリスティ・ノーム長官率いる米国土安全保障省(DHS)は、同大の留学生受け入れ資格の停止を発表した。通常、米国の大学は、DHSの下部組織である移民税関捜査局(ICE)が運営する「学生・交流訪問者プログラム」の認定を受けることで外国人の学生や研究者を受け入れることが可能になる。
その認定を停止されるとハーバード大は9月からの新年度の新入留学生を受け入れられなくなるばかりか、現在、在学中の外国人学生や研究者も引き続きの在籍が不可能になる。
この命令の理由としてDHSは、ハーバード大指導部が「反米的なテロ支援者たちが、多くのユダヤ人を含む個人を迫害し、身体的に攻撃し、かつては尊かった学習環境を損なう行為を容認することで、安全でないキャンパス環境を創り出してきた」と説明している。イスラエル支持のトランプ政権は、パレスチナ支持の姿勢が強かったハーバード大やコロンビア大などのリベラルな姿勢で知られる大学を目の敵にしてきた。
イスラエルのパレスチナ攻撃に反対する学生たちが、キャンパス内にテントを張って居座ることを長期間許していたハーバード大学当局に対し、トランプ政権は巨額の連邦補助金を止めることなどで圧力をかけていた。しかし、ハーバード大は言うことを聞かず、そこで政権が考えたのが今回の留学生資格取り消しである。
しかしそもそも「学生・交流訪問者プログラム」の認定を取り消す、もしくは出さないという仕組みは、今回のような使用を想定したものではなく、学業目的でなく就業目的で米国に入国しようとする外国人と、それと知りつつ営利目的で入学させて授業料収入を得る怪しげな大学を想定したものであった。多額の連邦補助金の差し止めにも揺るがないハーバード大に対し何とか言うことを聞かせようと、トランプ政権内の誰かがこの制度を見つけてきたのだろう。