KADOKAWAの現体制に「劣化」を感じていたという元会長の角川歴彦氏は、夏野剛社長CEOら現経営陣に異例の質問状を送った。その理由について説明した手記「 KADOKAWA夏野剛社長は、説明責任を果たすべきだ 」の一部を紹介します。
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KADOKAWAが直面した「二つの大きな問題」
私がKADOKAWAの現経営陣に対して、質問状を送ろうと考えたのは、昨年11月。ソニーグループがKADOKAWAに対して買収提案をしているという報道が出た際のことでした。
最終的にソニーグループがKADOKAWAの株の10%を持つことに落ち着いたのですが、この時、いくつかのメディアが私のところに取材に来たのです。創業家一族として、事実上の創業者として、ソニーに買収提案を受けた件を聞きたいということでしたが、経営陣のガバナンスの件にも興味があったようでした。
昨年、KADOKAWAは二つの大きな問題に直面しました。一つ目は、ご存じの方も多いでしょう。2024年6月に発覚した、ハッカー集団による大規模サイバー攻撃です。ランサムウェアによる攻撃を受けて、子会社「ドワンゴ」が運営するニコニコ動画などのサービスは停止を余儀なくされ、ロシア系のハッカー集団から多額の身代金を要求されたとも報道されました。
二つ目は、同年11月に、KADOKAWAと子会社が公正取引委員会から下請法違反(買いたたき)で勧告を受けた一件です。下請け業者に対して、原稿料や撮影料を引き下げる旨を一方的に通告。あろうことか、引き下げ率が数十%に達したケースも複数あったとのことです。
どちらの問題も私は報道で知りましたが、「本当なのか」と耳を疑わざるを得ませんでした。なぜこうした事態を防げなかったのか。経営陣がまずそこを反省すべきであるのは、論を待ちません。
しかし、さらに深刻だと私が感じたのは、企業としてしっかりとした説明を、対外的に行なっていないことです。KADOKAWAは出版社かつメディア企業としては珍しく、株式を上場しています。株主に対しても、社会に対しても説明責任を果たさなければならない立場なのです。