「コメについて消費者に安定した価格で供給できるよう全力で取り組む。最も力を入れなければならないのはコメ。とにかくコメに尽きる」
【関連画像】政府は実質的な減反政策を維持してきた(秋田県大潟村の田植え機、写真=共同通信)
小泉進次郎農相は21日の初登庁後の就任記者会見で、自らの役割についてこう強調した。
●「コメ、とにかくコメに尽きる」
失言と、その後の言動に批判が高まった江藤拓前農相の処遇を巡っては、石破茂首相の対応は後手に回った。首相や自民党幹部などは政策の継続性を考慮していったん続投を決めたものの、世論の批判がやまず、少数与党下で江藤氏に対する不信任決議案が可決される公算が大きくなり、方針を転換した。
石破首相は政権の要であり、自民党の農林族を取り仕切る森山裕幹事長と協議。森山氏が評価する小泉氏を推したことで、最終的に小泉氏の起用に踏み切った。
農政通の石破首相は、コメ価格の低下に向けた政府備蓄米の早期放出や、事実上続く減反などコメ政策の見直しがもともとの持論。だが、農林族の実力者でもある江藤氏は参院選を控え、農協などへの配慮から米価引き下げに慎重で、農林水産省も今年に入るまでは備蓄米放出などに後ろ向きの対応を続けた。
石破首相はコメ価格の高止まりが物価高の象徴となり、ひいては与野党の消費税減税論議の盛り上がりにつながったと見ている。首相周辺によると、江藤氏や農水省の対応に対し、首相は何度も怒りをあらわにしていたという。
首相周辺は「発信力が高く、改革のイメージが強い小泉さんを起用することで、コメの値下がりと政権浮揚、コメ政策の転換を狙える。ピンチをチャンスに変えたい」と漏らす。
夏に参院選を控える中、米国との関税交渉とともに今や石破政権の命運を握る政策課題となったコメ価格の引き下げ問題。小泉氏は5月21日の会見で、石破首相の指示を踏まえて予定していた4回目の入札を中止し、任意の業者に備蓄米を売る随意契約に切り替える方針を表明した。
今後のコメ政策の進め方については「まずはコメの価格を下げることを実現する。その上で最終的にコメが余った時にどうするのか、輸出や新たな需要の開拓を含めて考えていくほか、農家に対するセーフティーネットなども農水省全体として取り組みたい」と語った。
当面は米価引き下げに注力し、その後に事実上の減反見直しや輸出促進などコメ政策の抜本改革に取り組む意向を示したものだ。
だが、この2つの政策テーマを進めていくのは容易ではない。