日本有数の中高一貫共学校である渋谷教育学園幕張(渋幕)は、東京大学をはじめとする国内最難関大学への合格実績に加え、海外の超一流大学へ直接進学する生徒を多数輩出している点で注目を集めています。この卓越した国際教育の実績は、教育界で長年活躍してきた井上一紀氏の経験に基づいています。かつて渋幕の開校準備に携わり、その後進路部長や校長補佐を歴任した井上氏は、現在、東京多摩地区から世界に羽ばたく生徒を育成する明星中学校・高等学校、そして明星Institution中等教育部校長として、新たな挑戦を始めています。この記事では、渋幕が培ってきた国際教育のノウハウと、それがどのように次世代の教育に活かされようとしているのかを探ります。
明星Institution中等教育部校長 井上一紀氏
帰国生が牽引する「渋幕」の多様性と独自性
渋幕の教育において、帰国生(帰国子女)の存在は極めて重要です。開校当初から積極的に帰国生を受け入れ、今では全校生徒の約1割を占めるまでになりました。異文化の中で育った彼らは、個性的で独特な感性を持ち、一般生徒に大きな刺激を与え、学校全体の多様性を高める要因となっています。帰国生向けの英語授業はネイティブ教員が担当し、高いレベルの英語力を維持・向上させています。一方で、海外経験のある一般生の中にも、中3で英検1級を取得しながらも、あえて帰国生クラスを選ばず、東京大学進学を目指して実際に合格した生徒もいるなど、生徒一人ひとりの多様な進路選択を尊重する風土があります。
明星Institutionが目指すグローバル教育の未来像
2026年に開設される明星Institution中等教育部(MI)では、渋幕での経験を活かし、帰国生とインターナショナルスクール出身の国際生をそれぞれ5名ずつ募集する計画です。井上校長は、グローバル生の英語教育には特別なカリキュラムを用意し、国際人としての意識を育むための国際教育を推進するとしています。これには、帰国生、国際生、留学生の積極的な受け入れに加え、海外との文化交流を促す多様なプログラムの提供が含まれます。渋幕の田村哲夫学園長(当時校長)が世界の動向を見据え、姉妹校設立や交換留学、そしてグローバルプログラムの充実を図ってきたように、MIもまた、国際教育の最前線を走ることを目指しています。
世界へ羽ばたく「渋幕」の具体的なグローバルプログラム
渋幕の国際教育への取り組みは多岐にわたります。ユネスコ・スクールへの参加はもちろん、高校段階から国際的に活躍できるグローバル・リーダーを育成することを目的としたスーパーグローバルハイスクール(SGH)には、初期の56校の一つとして指定されました。2018年には、シンガポールのRaffles Institutionの提案を受け、世界の先進校と共に立ち上げたグローバルリーグを基盤に、「水」をテーマとした世界高校生会議を開催。これは、一学園の企画としては他に類を見ない卓越した国際イベントとなりました。また、参加者が大使となって国際会議さながらに議論や交渉、決議採択を行う「模擬国連」では、毎年日本の大会で優秀な成績を収め、ニューヨークの国連本部で開催される高校模擬国連国際大会へも参加しています。
海外名門大学への直接進学:開拓者としての「渋幕」
渋幕の大きな特徴の一つは、海外大学への直接進学実績です。アメリカ東海岸のアイビーリーグなどの名門校へ渋幕から初の合格者が出たのは、井上氏が渋谷幕張シンガポール校に在籍していた1990年代初頭にまで遡ります。バブル経済崩壊後、経済のグローバル化が進む中でも、当時はまず日本の大学に進学し、その後に留学を考える生徒が多数派でした。しかし時代は変わり、現在では最初から海外の大学を目指す生徒が増加傾向にあります。渋幕は、この海外大学進学という新たな道を切り拓き、生徒たちの多様なキャリアパスを支援するパイオニアとしての役割を担い続けています。
渋幕が長年培ってきた国際教育の経験と実績は、井上校長が率いる明星Institution中等教育部へと受け継がれ、さらなる発展を遂げようとしています。帰国生や国際生がもたらす多様性と刺激は、未来のグローバルリーダーを育成するための不可欠な要素です。渋幕で確立された先進的なグローバルプログラムと、海外名門大学への直接進学を可能にする強力な進路指導は、これからも日本の国際教育を牽引していくでしょう。




