義理の娘が満12歳のときから成人するまで長期間にわたり性暴力を加えていた男が、懲役23年の刑を言い渡された。これに加えて、精神的損害への賠償として3億ウォン(現在のレートで約3150万円。以下同じ)の慰謝料も支払うことになった。
大韓法律救助公団が27日に明らかにしたところによると、Aさんが満12歳だった2008年、母親がB被告と再婚した。母親は離婚と再婚、妊娠などで感情的な起伏が激しく、Aさんの面倒をきちんと見てあげることができなかった。
こうした状況の中、継父のB被告はAさんの話を聞いてあげていた唯一の大人だった。だが、それが「グルーミング性犯罪」の釣り針だということを、当時のAさんは知らなかった。B被告は心理的にAさんを従属させた後、性行為がどういうものかも分かっていなかったAさんに対し犯行に及び始めた。
Aさんは、容易には抜け出せなかった。B被告は性犯罪に及ぶたびに「お前を愛しているからやっている」と言いつつ「死ぬまで誰にも言うな」と口止めした。果ては、Aさんに「すごく好き。お父さんなしでは駄目」という言葉を繰り返し言わせて、Aさんをいわゆる「グルーミング」によって抗拒不能状態に陥れた。最終的にB被告は2020年まで、Aさんに対して準強姦(ごうかん)・強制わいせつ・類似性行為などの性犯罪を2092回も繰り返した。
後になってこの事実を知ったAさんの実母は大きな衝撃を受けて極度の苦痛にさいなまれ、自ら命を絶った。その後、Aさんは継父を告訴した。その結果、被告は2024年に懲役23年を言い渡された。被告は判決を受け入れられずに控訴・上告までしたが、裁判所の判断は同じだった。
刑事手続きにおいて国選弁護士でAさんを支援した大韓法律救助公団は、その後、被害者の権利回復のために損害賠償訴訟にも乗り出した。
訴訟の争点は「慰謝料の額」だった。通常、交通事故の死亡被害者の慰謝料が1億ウォン(約1050万円)の水準である慣行に照らし、性暴力被害者の慰謝料も1億ウォン以下の認定となる事例が多かった。だがAさんの事件の場合、被害が長期間にわたり、その犯行の程度が極めて深刻であることから、もっと高額の慰謝料を受け取る必要があった。
公団は「B被告の反復的かつ残酷な犯行はAさんの身体と性的自己決定権を重大に侵害した違法行為で、Aさんと母親は回復困難な精神的苦痛を負った」「Aさんは今も精神科の治療を受けて薬を服用するなど、深刻な後遺症を負っている」と主張した。
ソウル中央地裁民事合議34部(裁判長:金昌模〈キム・チャンモ〉部長判事)はこれを受け入れた。裁判部は▲継父として娘が肉体的・精神的に健康に成長できるように保護すべき責任があるにもかかわらず、12歳に過ぎなかったAさんに対して持続的に姦淫・わいせつ・性的虐待行為などの反人倫的な犯行に及んだこと▲Aさんが心的外傷後ストレス障害の診断を受け、今後も精神的な被害と傷を完全に癒やすことは困難とみられること▲Aさんの実母は精神的衝撃で自ら命まで絶ったこと―などを考慮し、慰謝料の額を3億ウォンと定めた。被告は控訴せず、判決は今月17日に確定した。
Aさんの代理を務めた大韓法律救助公団の申智湜(シン・ジシク)弁護士は「性暴力は被害者に癒やし難い精神的な傷を負わせ、英米法では懲罰的損害賠償まで認めるほどに重大な事案なので、韓国の裁判所も被害者の実質的な権利救済および予防と制裁の観点から、高額の慰謝料を認める必要がある」とし、さらに「今回の判決が性暴力被害者の慰謝料認定において意味のある転換点になることを期待する」と述べた。
公団関係者は「今後も性暴力被害者の心理的回復と法的権利保護のために刑事手続きだけでなく民事上の損害賠償訴訟まで積極的に支援していく計画」だとし「また、危機にある被害者に対する専門相談や連携支援システムも強化する方針」とコメントした。
イ・ガヨン記者