「安くてウマい!」一石二鳥の″鶏系居酒屋″に目をつけた猛者の勢力図に異変!


鶏系居酒屋は″一石二鳥″

【画像】帝国打倒は叶うのか? 鶏系居酒屋戦争『勢力図』

5月上旬、FRIDAY記者が『やきとりの名門 秋吉』銀座店を訪れると、そこには20人を超える客が行列を作っていた。30分ほど待って店内に入ると、場所柄やはり中年男性がビール片手に談笑する姿が目立つ。

「いらっしゃいませ、社長!」

新規の客が入るたび、店内に威勢のいい掛け声がこだまする。曰(いわ)く、男性客は「社長」で女性客は「お嬢ちゃん」と呼ぶことになっているそう。「お客さんが払う代金から従業員の給料が支払われるため、社長と呼ばせていただいています」と誇らしげに説明する店員に「ならば『お嬢ちゃん』はおかしいのでは」と言いたくなる気持ちを抑え、人気メニューの「ねぎま」(5本で528円)を注文した。記者とともに同店を訪れたフードアナリストの重盛高雄氏が話す。

「’59年、福井市で創業した『秋吉』の1号店はわずか4坪でしたが、いまや北陸では知らない人はいないほど定着しており、全国に103店舗を構えるまでに成長しました。同店の特徴といえば、席に設置されたステンレスの保温台。注文した串は焼きたての状態でそこに置かれるのですが、この台は触ると少し熱いと感じるくらいの温度に保たれている。だから話し込んでも、串が冷めない。職人が一本一本丁寧に焼いた焼き串は絶品です。
鶏系の居酒屋は、串や揚げ物などにメニューを絞ることで、食材や調理器具のコストを抑え、その分を品質向上や調理へのこだわりに充てることができる。鶏だけに″一石二鳥″なんです」

◆特大ヒットの『伝串』

仕入れ原価の安い鶏をメインにすることで、開店にかかる初期費用も安く済む。

当然、こうした″鶏系居酒屋″に目をつけた猛者(もさ)は少なくない。事実、’10年代に入ってからは『新時代』(143店舗)、『三代目鳥メロ』(101店舗)、『ミライザカ』(88店舗)、『それゆけ! 鶏ヤロー!』(78店舗)など、立て続けに鶏料理に焦点を絞った居酒屋が出現した。なかでも特大ヒットとなったのが、『新時代』の「伝串」(1本55円)だ。B級グルメ探究家の柳生九兵衛氏が話す。

「鶏皮を波型に串打ちして揚げ、オリジナルスパイスをかけたのが『伝串』です。1本単位でも頼めますし、6本以上頼むとピラミッド型に盛り付けて提供してくれる。この″ピラミッド″を見たさに、友達を誘って多めに注文しますよね。
鶏皮を揚げた料理は不健康なイメージを持たれがちですが、かかっているオリジナルスパイスは高麗人参や大豆で作られていて、塩分ゼロでヘルシー。健診の数値が気になる中年の罪悪感を和(やわ)らげてくれます。
『新時代』は『伝串』を食べに行く店。『世界の山ちゃん』(71店舗)に『幻の手羽先』を食べに行く客が後を絶たないのに近いですね」

『鳥メロ』と『ミライザカ』は、総合居酒屋の『和民』を運営していたワタミ株式会社が鶏系居酒屋の可能性を見出して開店を決意した。柳生氏が続ける。

「開店時は『和民』にブラック企業のイメージがついてしまったこともあって、’16年頃から、『和民』を『鳥メロ』、『ミライザカ』に置き換えていきました。『鳥メロ』は1本88円から注文できる焼き鳥を、『ミライザカ』は『清流若どり 骨付モモ一本グローブ揚げ』(1098円)など鶏系料理を売りにしてはいますが、海鮮メニューが多く残っているために″総合居酒屋″のイメージが抜けきらない。宴会メニューにも牛のすき焼きや本マグロの刺身がラインナップされるなど、″鶏系居酒屋″としての個性は弱いように感じます。現在は2店合わせて200店舗近くまで成長していますが、今後は勢いが衰えていくかもしれません」

『FRIDAY』2025年5月30日号より

FRIDAYデジタル



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