国債の消化に暗雲 民意踏まえ財政再建の断行を


【図表】新規国債の発行どころではなくなる可能性も

 〝世界最悪の財政〟のわが国が、これまで生き永らえてこられたのは、ひとえに国債の利払費が増えずに済んできたからにほかならない。日本銀行の異次元緩和は、事実上、財政の延命装置として機能してきた。

 しかし、今わが国も遅ればせながら、金利上昇局面に入っている。日銀が短期の政策金利をどこまで引き上げるか、長期から超長期ゾーンの市場金利がどこまで上昇するかは、わが国経済の先行きの鍵を握る。国内の経済・物価情勢の先行きに影響を及ぼすのみならず、国の利払費が増嵩すれば財政運営の継続は一段と厳しくなる。また、利上げは日銀自身の財務の悪化に直結し、円に対する信認が損なわれれば、利上げで通常期待される動きとは裏腹にさらなる円安の加速を惹起しかねない。

 一国が財政運営をつつがなく続けていけるか否かは、市場からの借金を安定的に続けられるかどうかで決まる。これは企業も国も全く同じことだ。だが、その安定調達が危うくなりつつあるのが足元の現実だ。

 わが国の国債発行での今年度の要資金調達額は、カレンダー・ベースで約172兆円に達する。昨年夏より財務省理財局は、超長期国債や長期国債をこれ以上購入するのは困難という国内機関投資家(生命保険会社など)や国内民間銀行などの意向を汲み、国債の発行年限のさらなる短期化を図る方針を打ち出した。

 さらに本年5月には、2027年1月以降の変動利付債(2年債、5年債)の発行開始も打ち出した。これは近年の先進国ではみられない国債管理政策上の手段であり、わが国もついに、デフォルト(国債の元利払いの債務不履行)を繰り返してきたアルゼンチン並みの状態に近づいたことを意味する。

 続く本年6月には、超長期の市場金利水準の上昇を受け、新年度に入り、わずか3カ月経過した時点で、財務省は国債発行計画の変更を余儀なくされた。これは世界的に見ても異例の事態で、わが国の財政運営がそれだけ追い込まれていることを物語る。



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