実は今、世界の映画市場でハリウッドが陰りを見せる一方、日本映画は興行収入で過去最高を記録し、国内外で存在感を増しています。
なぜ今、日本映画はこれほどまでに好調なのか? その背景には、国際情勢や業界構造、そして日本独自のヒットの仕組みが複雑に絡んでいます。
本稿では和田隆著『映画ビジネス』より、映画において「邦高洋低」の時代が続く理由を、業界紙の記者として映画業界の表と裏を取材をしてきた著者が読み解きます。
■世界の映画市場の現状
2024年4月に発行されたアメリカのSkyQuest社の市場調査レポートによると、世界の映画・エンタテインメントの市場規模は、2022年の約974億7000万ドル(約15兆2000億円)から上昇し、2031年までには1822億3000万ドル(約28兆4000億円)に達すると予測しています。
これは仮想現実(VR)に観客を没入させる映画への需要の高まりが市場を推進すると予想しているためであり、音楽や映像が利用できるストリーミング・プラットフォームのその他の特典として、コンテンツのクオリティがさらに向上していくことも、市場の成長の要因の1つとしています。
さらに、ユーザーはオーディオやビデオコンテンツのプレイリストを簡単に作成することができるので、ミレニアル世代(1980年代前半から1990年代半ばまでに生まれた人々)に訴求することができれば、市場の拡大につながるとしています。
中国、韓国、インドなどの国々でモバイルやネットの利用が増加していることも市場拡大に貢献しており、アジア諸国の急速な成長と需要の増加が期待されます。ネットやテレビなど複数のチャンネルで視聴者が利用できることによって、新しい才能の普及も促進されてきました。
アメリカは長い間、世界のコンテンツ市場に君臨してきましたが、ヨーロッパ諸国では、アメリカの巨大なコンテンツ産業から自国の産業と文化を守るために、製作や人材育成に補助金を交付するなど支援を続けています。
アジアでも、日本のコンテンツの流入を制限しながら、自国の文化を守ることを目的に、人材育成や投資などで国が積極的な支援活動をしている国もありますが、お隣の韓国では、コンテンツ産業を国家戦略として振興していて、日本とアジア諸国間のコンテンツ貿易は活発化しています。