自民党の新たな顔として高市早苗氏が総裁に選出され、その勝利はこれまでのリベラル路線に不満を抱いていた岩盤右翼層を大いに喜ばせました。彼らは自民党の大きな変革に期待を寄せていましたが、高市氏は早くも連立パートナーである公明党の離脱という問題に直面しています。しかし、公明党代表の発言から、高市氏が首相に就任する可能性は依然として高く、本稿ではもし彼女が首相になった場合に生じうる「ある深刻な問題」について深く掘り下げていきます。
極右的主張からの「変節」:靖国参拝問題に見る政治家の「嘘」
高市氏は、その極端に右翼的な言動で広く知られ、故安倍晋三元首相の支持基盤である岩盤右翼層からの支持を確実に継承してきました。しかし、総裁選の最中、彼女はこれまでの過激な主張を大幅に修正し始めました。顕著な例は靖国参拝に関する発言で、以前は「首相になっても参拝する」と明言していたにもかかわらず、総裁選では「適時適切に判断」という表現に切り替えました。これは実質的に、秋の例大祭への参拝を行わないことを示唆しています。
政治の世界では、責任ある立場に就くことで過去の過激な発言を修正し、より穏健な路線へ転換する行為が、「現実的」という言葉でその本質を糊塗される傾向にあります。「首相になっても靖国に行く」と言っていたのに実際には行かないのは、単純に「嘘」に他なりません。しかし、勝利に沸く右翼層は、この矛盾に水を差されることを望まず、「首相になったら国益のために現実路線を選ぶこともある。高市氏の柔軟性は良い点だ」と称賛するような雰囲気すら出ています。「嘘つき」が「現実的」「柔軟」という言葉に置き換えられることで、高市氏のイメージへの傷は大きくならずに済むのです。
政治評論家・古賀茂明氏が語る高市早苗氏の首相就任における深刻な問題
連立離脱と外交姿勢の「現実路線」:国益と媚びへつらいの狭間で
公明党の連立離脱の可能性についても、右翼層からは「よく公明党を切ってくれた!」と賞賛の声が上がるほどでした。もし高市氏が首相に選ばれれば、10月末からのASEANやAPECなどの国際首脳会議、さらにはトランプ米大統領との会談が控えています。その際、彼女は過去の強硬な持論を封印し、歴史認識の異なる韓国の李在明大統領や中国の習近平国家主席とも、国益の名の下に笑顔で握手を交わし、会談を成立させようと努めるでしょう。
トランプ大統領に対しても、総裁選中に示唆していた国益に反する関税合意の再交渉を辞さないという態度は既に修正されており、実際の会談では、あの作り笑顔で媚びへつらい、ご機嫌取りに終始する姿が映し出されることが予想されます。それでもなお、「さすが安倍さん譲りの外交力でトランプをうまく手なずけた!」といった評価がネットで飛び交うことは容易に想像できます。
結論
高市早苗氏の首相就任が現実となれば、その政治姿勢の「変節」は看過できない問題として浮上します。極右的な主張で支持を集めながら、責任ある立場に就くやいなや「現実路線」の名の下にその持論を修正する。これは、言葉と行動の間に生じる「嘘」でありながら、一部の支持層からは「柔軟性」として肯定的に解釈される傾向にあります。
特に外交の場では、国益を優先するという大義名分の下、過去の強硬な姿勢を一転させ、融和的な態度を取ることが予想されます。しかし、その根底にあるのは真の柔軟性や戦略性なのか、それとも権力を維持するための便宜的な「媚びへつらい」なのか、その真価が問われることになるでしょう。私たちは、高市氏の今後の言動を注意深く見守り、その政治的「現実路線」が本当に国益に資するものであるのか、それとも単なる自己保身のための変節なのかを冷静に評価する必要があります。