「コメ買ったことない」発言で辞任した江藤拓農水相の後任に、小泉進次郎元環境相が就任して、注目を集めている。期待されているのは、まさに交代劇の背景にある「慢性的なコメ不足と価格高騰」に対する抜本的な解決だ。進次郎氏自身も「コメ担当大臣」を自称して、コメを中心とした農政改革に意欲を示している。
【画像】”小泉米”が流通すれば、米価格も落ち着く?最近の高騰で”30年前の水準”になっているが
現状では、国民の受け止めは好意的だ。その背景には、郵政民営化を推し進めた父・小泉純一郎元首相のように、大きな構造改革の担い手としての期待がある。
そんな中、さっそく打ち出されたのが「備蓄米の放出」だ。廉価で流通させることへの期待感から、現状を打開する切り札として、進次郎氏の評価が高まりつつある。
あわせてSNS上では、JA(農協)を解体して、新たな農業の姿を模索すべきだとの主張も多々見られる。多くの意見は「既得権益の打破」といった文脈から投げられているが、長年SNS世論を見てきたネットメディア編集者としては、こうしたムードは、危険もはらんでいると感じる。その理由を説明したい。
■透明性が確保しづらい流通ルート
2025年5月21日に農水相に就任した進次郎氏が、最初に着手したのは「政府備蓄米の流通ルートの変更」だ。
これまでは、入札により、高い値を付けた業者が落札する流れだった。これを政府が価格を決め、入札せず、業者との随意契約によって販売する形に変更した。
随意契約のメリットとしては、価格競争にならず、なおかつ迅速に売買できる点がある。一方で、基準が比較的明確な入札に比べ、透明性が確保しづらいため、業者との癒着や汚職の温床になりかねない。
5月26日に申し込み受付を始めた随意契約は、大手小売業者向けに、2022年産のコメ20万トン、2021年産のコメ10万トンの計30万トンが対象となった。60キロあたり税込1万1556円で売り渡される。応募した事業者は27日14時時点で33社(約15万7000トン)となり、受付は一時中止となった。
これらの状況を見て、SNS上では好意的な反応が多い。一部マスコミが備蓄米を「小泉米」と呼んだことから、野党支持者を中心に批判が出つつあるが、備蓄米の随意契約そのものは受け入れられているようだ。