事件から21年「佐世保小6同級生殺害」 社会復帰した「11歳加害少女」の謝罪を待ち続ける「被害女児」実兄の“思い”


【写真】「11歳加害少女」が自ら記していたプロフィール

【川名壮志/毎日新聞記者】

【前後編の後編】

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「あの子」は今

 事件の現場となった小学校は、山の中腹にあり、各学年一クラスしかない小さな学び舎だった。
 全校児童が200人にも満たない牧歌的な学校で、真っ昼間に少女が同級生を殺めた。
 彼女は、どんな子供だったのか。

怜美ちゃんが死んじゃう、と叫んだ少女

 4時間目の国語の授業が終わった正午すぎ。児童たちが給食の準備にとりかかり、騒がしい時間帯。
「ちょっといい?」
 少女は担任の目を盗んで、御手洗怜美(さとみ)ちゃんに声をかけた。そして、教室から50メートルほど離れた空き教室へと連れだした。
 カーテンが閉めきられた部屋で、少女は怜美ちゃんを椅子に座らせると、カッターナイフで後ろから首を切りつけた。わずか15分のできごとだった。
 子供とは思えないほどの蛮行だが、事件直後の少女はうすら寒くなるほど現実感が乏しい。
 少女は現場で怜美ちゃんの死を確かめていた。にもかかわらず、その直後、自分の手やズボンをべったりと血糊でぬらしたまま、
「救急車を呼んで。怜美ちゃんが死んじゃう」
 と教師に告げていた。
 おそらく隠蔽のための言い訳ではない。自分の犯した過ちの重みがわかっていないのだ。

 少女は逃げるそぶりもみせずに警察に補導され、その後、少年鑑別所へと送致された。それから2か月間にわたって精神鑑定された後、少年審判で児童自立支援施設への入所が決まった。
 彼女は11歳。当時は少年院への入所の対象でさえなかった。そのため厚生労働省が管轄する児童福祉施設にしか入れなかったのだ。つまり、彼女は法律上は「社会の被害者」。「守られる」対象であり、自立が支援される存在だったのだ。



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