特集:中国新移民 潤日 中学受験に押し寄せる「潤日」 中国の過熱競争を日本で再現=安藤大介


 この日はSAPIXの定期的な保護者会。母親たちは日ごろから同じSNSグループで情報交換しており、校舎前は、出席した母親の〝オフ会〟になっていた。

 ジャーナリストの舛友雄大氏によると、こうした大手進学塾のSNSグループは、子供の偏差値に応じて、保護者もグループ分けされている。子供がテストの結果次第で、所属クラスが昇降するように、親のSNSグループもメンバーの入れ替えが行われる。ノルマをこなさないと、グループから外されることもあるという。

 ◇日本に「逃げる」富裕層

 中国人が子供の教育に熱心なことは、よく知られる。特に、富裕層は幼い頃から子供を塾に通わせたり、習い事をさせたりして、有名大学に入れようと躍起になる。そして、そうした富裕層が今、日本に拠点を移す動きが広がっている。「潤日(ルンリー)」と呼ばれる人々だ。

 中国を離れて海外に移住、脱出する富裕層は「潤(ルン)」と呼ばれる。中国でも「うるおう」が本来の意味だが、発音が英語の「run」に近いため、「逃げる」という意味で、隠語的に使われる。世界に「潤」する人のうち、日本を目指すのが「潤日」だ。

 中国から来日する富裕層は、増加傾向をたどっていたが、新型コロナウイルス禍の都市封鎖(ロックダウン)以降に急増した。政府への不信、長引く不動産不況と、政治や経済の将来に対する悲観が「潤」を加速させた。子供に良い教育を受けさせたいとの思いも、移住を後押しした。

 日本に移住するのは、世界的にも「安価」だ。500万円を元手に起業するなどすれば、長期滞在ビザを手にすることができる。

 こうした富裕層の一部は、子供への教育を重視する「教育移住」により、日本に中国の教育熱を波及させた。日本の都市部で過熱する中学受験の世界に子供を投じるのは、むしろ自然な流れだった。



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