中国に人権の「集中砲火」 香港・ウイグル問題で


 【北京=西見由章】香港や新疆ウイグル自治区の人権問題をめぐって中国当局への国際社会の批判が高まっている。香港での「逃亡犯条例」改正案に端を発するデモ拡大の背景には、国内の少数民族抑圧の実態を香港の未来に重ね合わせる若者らの危機感があり、2つの問題は地続きだ。欧米諸国から人権問題で“集中砲火”を浴びる中国側は「内政干渉」としていらだちを強めている。

 中国外務省の鄭沢光次官は25日、米国のブランスタッド駐中国大使を呼び出し、米上下両院が香港人権民主法案を可決したことについて「強い抗議」を行い、法案を阻止するよう求めた。中国側は20日にも同法案をめぐって米国の臨時代理大使に抗議したばかりで、米大使館幹部への相次ぐ呼び出しは異例だ。

 中国外交トップの楊潔●(=簾の广を厂に、兼を虎に)(よう・けつち)政治局員も26日、同法案に「強烈な非難」を表明する談話を発表。共産党機関紙、人民日報も26日付の論評で、同法案が「暴乱の悪行を扇動」しており「国際社会に唾棄」されるものだと批判した。

 香港情勢に世界の耳目が集まる中で、新疆ウイグル自治区での人権弾圧に対する国際的な批判も急速に高まっている。

 17日付の米紙ニューヨーク・タイムズは中国当局の内部文書を入手し、2014年に習近平国家主席が同自治区を視察した際の演説で「反テロ、反分離主義闘争」の全面的な展開を掲げ、「情け容赦ない」対応を求めたと暴露した。

 さらに国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)は24日、ウイグル族ら100万人以上が収容されているとされる再教育施設の管理指針や大規模監視システムなどに関する内部文書を入手したと発表した。

 中国当局は、こうした報道について「デマ」「卑劣な手段であおっている」(外務省報道官)などと反発しているが、焦りの色もにじむ。国営メディアは26日、中国政府系の人権団体「中国人権研究会」がまとめた米国の性差別問題に関する報告書を唐突に報じたが、人権問題で責め立てる米当局への急造の“意趣返し”であることは明白だ。



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