ドナルド・トランプ米政権が800ドル(約11万7000円)以下の小額小包に対する関税免除を廃止したことを受け、世界各国の郵便機関が米国宛ての小包発送を停止する事態が相次いでいます。これは国際的な物流システムに広範な影響を及ぼし、越境EC事業者や個人利用者にとって新たな課題となっています。
主要な郵便配送会社の対応と停止の背景
欧州最大の郵便配送会社であるドイツDHLは、8月22日付でホームページに声明を発表しました。同社は「22日から商品が含まれた米国宛て小包と郵便物を受付・運送できなくなった」と明らかにし、その理由として「米国当局が郵便配送に関連して既存の規定と異なる新しい手続きを導入した」と説明しています。さらにDHLは、「今後(米国内で)関税を誰が徴収するのか、(関税納付のために)さらに必要な情報は何か、その情報が米国国土安全保障省 税関・国境取締局(CBP)にどのように伝達されるのかなどに対する疑問点がまだ解消されていない」と、新制度の不透明性を指摘しています。
英国の郵便会社ロイヤルメールも同様の理由から、米国宛ての小包配送業務を一時停止するとBBCが報じました。フォックスビジネスの報道によると、デンマーク、スウェーデン、イタリア、フランス、ベルギーの欧州各国郵便サービスも米国への配送停止を計画しており、アジアからはシンガポールとタイが新しい規定が明確になるまで配送を見送ると表明しています。
DHLの配送トラック。米国への小包発送停止を発表した主要国際郵便会社の一つ。
韓国の郵政事業本部も対応
アジアの主要国である韓国も、この動きに追随しています。韓国郵政事業本部は、8月25日から米国行き航空小包の受付を、26日からは国際特急郵便サービス(EMS)のうち関税が免除される書類を除くすべての物品について郵便局窓口での受付を停止すると発表しました。これは、米国への国際郵便の送付を検討している韓国の利用者にとって直接的な影響をもたらします。
新関税政策の目的と内容
今回の混乱の発端は、トランプ政権が先月発表した行政命令にあります。この命令により、8月29日午前0時(現地到着分)から、これまで適用されてきた小額小包に対する関税免除が廃止されることになりました。米国政府は、免税対象の小型郵便物が不法麻薬類や偽造品などの違法な搬入ルートとして悪用されていることを廃止の理由としています。これまでは、海外から搬入される800ドル以下の郵便物には関税が免除されていましたが、今後は書類や手紙などを除くすべての米国行き郵便物が申告の対象となり、原則として15%の関税が課されることになります。
結論
米国政府による小額小包の関税免除廃止は、国際的な郵便・物流システムに予測不能な影響をもたらし、世界中の郵便配送会社が米国へのサービス提供を一時停止する大規模な事態へと発展しました。新制度の詳細な運用方法や、関税の徴収・情報伝達に関する不透明性が解消されるまでは、国際小包の送付は困難な状況が続く見込みです。今後の国際貿易と物流の動向、そして各国の対応が注目されます。
参考資料
- フォックスビジネス
- BBC
- DHL公式声明
- ロイター=聯合ニュース