トランプ政権が5月22日、ハーバード大に対し、留学生を受け入れるための認可停止を発表した。波紋は全世界に広がっている。
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かねてから、トランプ政権は米国を代表するエリート大学を「行き過ぎた左派の牙城だ」として敵視してきた。左派的なイデオロギーを揶揄(やゆ)して「ウォークネス(社会正義の意識に目覚めること)」と呼ばれる思想を米国に広げたのが、エリート大だという主張だ。これまで、ハーバード大、ブラウン大、コロンビア大、ブラウン大、コロンビア大、コーネル大、ノースウェスタン大、ペンシルベニア大、プリンストン大などの名門大が制裁の標的になってきた。
■「連邦政府に乗っ取られるようなことは許されない」
ハーバード大に対しては、学内でのイスラエルへの抗議デモを「反ユダヤ主義だ」と批判すると、教育内容などにも踏み込む「改革」を要求。だが、ハーバード大側は「大学の独立を脅かすものだ」「私立大学が、連邦政府に乗っ取られるようなことは許されない」などとして拒み続けてきた。
その結果、5月22日になって政権が強硬手段に出たのだ。凍結するとした助成金は22億ドル(約3100億円)超にのぼる。さらに、留学生受け入れに必要な認可を停止したと発表。衝撃が広がった。
■「留学生受け入れ停止」を地裁が差し止め
ハーバード大の留学生は学生の約27%を占める約6800人。同大によると、そのうち110人が日本人学生だ。認可の停止によって、「転学」か「法的資格の喪失」の選択を迫られる事態となったが、翌23日になって一転、連邦地裁が一時的な差し止めを命じたため、当面は効力を持たないことに。今後、地裁での審理が本格化する見通しだ。
『東大よりも世界に近い学校』の著者で、活育財団共同代表の日野田直彦さんは「現地にいる学生たちは比較的冷静に過ごしているようです。トランプ政権のセンセーショナルな演出に惑わされず、推移を見守っているのでしょう」と話す。
■東大などがハーバード大生の受け入れ検討
ハーバード大の学生の動きに注目するのは、世界各国のトップ大学だ。日本も例外ではなく、同26日には、東大がハーバード大の留学生を一時的に受け入れる検討をしていることが明らかになった。次いで、京都大、大阪大、名古屋大も検討を表明。世界トップレベルの研究力をめざす国の「国際卓越研究大学」制度の認定第1号である東北大学は、ハーバード大生を受け入れるため、すでに米国で説明会を行ったと報じられている。
「ハーバード大の学生は世界各国のトップ大から引く手あまたです。優秀な人材の取り合いが加速すると思います」(日野田さん)
(AERA編集部 古田真梨子)
古田真梨子