カナダ最大都市のオンタリオ州トロントで昨年6月に開館した「アジア太平洋平和博物館」を巡って、展示内容が日本の国会で問題視されている。旧日本軍の悪質性を誇張する表現や、真贋が明確でなかったり事実と異なったりする写真の掲示が確認される上、戦後80年を控え、反日史観の浸透が懸念されるためだ。実際、展示内容を検証した専門家は産経新聞の取材に複数の虚偽を指摘した。
【写真】Life誌に掲載された、1937年8月28日上海南駅の爆破の後、血まみれになり必死に泣き叫ぶ赤ん坊
■「反日宣伝の教育拠点化」
「まさに反日博物館といっていい。多くの高校生らを招待して反日宣伝の教育拠点化している」
自民党の佐藤正久参院議員は4月17日の参院外交防衛委員会でこう述べ、展示を問題視した。岩屋毅外相も5月27日の同委で「史実からかけ離れ、極端な文言や表現で展示された事例を確認している」と語った。
同館は中華系団体「ALPHA EDUCATION」が約7年の準備期間を経て開設した。中高生の学習の場に想定され、アジアの第二次世界大戦の歴史を英語で紹介する世界初の博物館と報じられている。外務省によれば州政府機関の助成金も投入された。
ALPHAはアジア系議員を通じて「南京大虐殺記念日」制定や「南京大虐殺犠牲者記念碑設置で働きかけるなど、南京事件の宣伝に力を入れることで知られる。
■「かわいそうな」日本兵を逆用
館内は写真撮影が禁じられており、南京事件を巡り史料や証言取材を重ねてきた近現代史研究家の阿羅健一氏は同館のホームページ(HP)に掲載された海外メディアの記事を通じ、展示内容に強い疑問を呈する。
同館1階で「LOOTING(強奪)」と掲示され、荷物を背負って前かがみになって歩く日本兵の写真は、東京日日新聞(毎日新聞の前身)の従軍カメラマンが撮影したものという。
1985年秋、カメラマンは阿羅氏のインタビューに応じ、「日本兵は、南京に入ったので気がゆるんで肩の力が抜けたんでしょう、肩をがっくり落として歩いていました。それを見たとき、兵隊の気持ちがよくわかったので撮った」と語っている。
カメラマンはこの年老いた兵士を「かわいそうな兵隊」という説明で本社に写真を送稿したが、戦後、「強奪する兵隊」などと逆用される。