日本の鉄道では、新幹線は新幹線の車両、在来線では在来線の車両しかやってこないのが普通です。山形新幹線と秋田新幹線という、新幹線車両が在来線に直通する例外はありますが、両線(奥羽本線・田沢湖線)とも、新幹線車両と在来線車両がどちらも走行しています。
しかし、福岡県内を走る在来線の博多南線では、様子が異なります。この路線は、時刻表の路線図を見ると、新幹線を示す赤・白の線ではなく、黒の実線、つまり在来線という表記です。しかし実際に博多南線を走る車両は、500系や700系などの新幹線車両のみです。
この「在来線なのに新幹線車両がやってくる在来線」博多南線は、博多駅の隣にある車両基地(博多総合車両所)への回送線を活用して誕生した路線です。終点の博多南駅付近は、近隣の鉄道駅から離れた「陸の孤島」でした。このエリアの利便性向上のため、車両基地への回送列車に乗車できるようにしてほしいと、周辺住民らが国鉄→JRに要望。これが通り、1990年に博多南線として開業しました。
このような経緯で生まれた博多南線は、山陽新幹線の車両を活用して運転されているため、やってくるのは500系、700系、N700系(8両編成)と、すべて新幹線の車両です。2025年現在、博多~博多南間では、特急券が130円、運賃が200円で、計330円で新幹線車両に乗車可能。通年で営業している区間としては、最も安く新幹線車両に乗車できる路線となっています。
そして実はもう一つ、在来線ながら新幹線車両しかやってこない路線があります。上越線の越後湯沢~ガーラ湯沢間です。ガーラ湯沢駅は、上越新幹線の保守基地として整備されていましたが、JR東日本が駅と直結するスキー場を整備し、冬季に営業する臨時駅として、1990年に開業しました。同駅にやってくる列車は、上越新幹線と直通する「たにがわ」のみで、時刻表の路線図でも上越新幹線の支線のように表されています。しかし、書類上は上越新幹線ではなく、上越線、つまり在来線の路線という扱いです。
ちなみに、越後湯沢~ガーラ湯沢間では、特急券が100円、運賃が150円で、計250円で新幹線車両に乗車可能(2025年現在)。冬季限定ではありますが、博多南線よりも安く、新幹線車両に乗車できます。
西中悠基