「夫婦同姓」が強制されているのは世界で日本だけ。そこで「選択的夫婦別姓」を求める動きが広がっている。今年4月には立憲民主党が、5月には国民民主党がそれぞれ独自の選択的夫婦別姓の民法改正案を国会に提出した。だが、与党・自民党は意見がまとまっておらず、今国会での実現は難しいと見られている。ただ、現在も法的に「夫婦別姓」を選んでいる人たちがいる。外国人と結婚した国際結婚カップルだ。彼らはどんな考えで姓を選び、子どもの姓はどうしたのか。3組の国際結婚カップルと家族法の専門家を取材した。(文・写真:ジャーナリスト・田中瑠衣子/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
「ある日突然姓が変わる違和感」 結婚前の姓を選んだ
東京・城北地域に住む石井紗季さん(仮名、40代女性)はこう話す。
「ある日突然、自分がマルタンという姓になることに違和感がありました。たとえば、病院に行ったとき“マルタン紗季さん”と呼ばれても、自分じゃないような変な感じがして……。でも調べたら、結婚しても姓は変えなくてもいいことが分かり、石井姓のままでいることにしました」
石井さんは、夫でフランス人のジュリアン・マルタンさん(仮名、40代男性)、長男で小学5年生の琉衣(るい)さんとの3人家族だ。2010年3月にIT企業で働いていたマルタンさんと結婚した。
民法は「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫又は妻の氏を称する」(750条)と定めている。婚姻届を出して法的に結婚すると、どちらかは自分の姓を失うようになっている。
それなのに、なぜ石井さんは夫婦別姓で婚姻届を出すことができたのか。
実は外国人と国際結婚した場合、原則的には日本人の姓は変わらない。ただし、外国人の姓を名乗りたい場合は、半年以内に戸籍届出窓口で変更手続きをすると、姓を変えることができる。つまり今でも夫婦別姓が認められている状況なのだ。
石井さんとマルタンさんは区役所に婚姻届を出した。日本人同士が婚姻届を出すときには妻か夫、どちらの姓を名乗るか選び、統一した姓で戸籍が作られるが、外国人配偶者の場合、戸籍を持つことはない。石井さんが筆頭者の戸籍には、マルタンさんの氏名、国籍、生年月日などと結婚した事実が記載された。