ミスタープロ野球、長嶋茂雄さんが6月3日、肺炎のため東京都内の病院で亡くなった。読売新聞やNHKなど、各メディアが一斉にそう報じている。国民的人気を誇ったスターの訃報に衝撃が走っている。
●巨人ファンにとどまらず、広く愛された
言うまでもなく、長嶋さんは巨人の黄金時代を築いたスター選手だ。引退試合で残した「我が巨人軍は永久に不滅です」という名言はあまりにも有名である。
監督としても手腕を発揮し、リーグ優勝5回と日本一2回を達成。それまでの功績から国民栄誉賞(2013年)、プロ野球界初となる文化勲章(2021年)が授与された。
巨人ファンにとどまらず、広く愛された。80年代生まれの阪神ファンである筆者にとっては、野球中継と警備会社のCMを通じて、どこか憎めない親戚のおじさんのような存在だった。
●一茂さんは「もう遺産放棄している」と発言していた
そんな長嶋さんの訃報を受けて、SNS上ではさっそく、遺産の行方や相続争いを心配する声が一部あがっている。
長嶋さんの子といえば、タレントの長嶋一茂さんや、キャスターの長島三奈さんがよく知られている。
しかし、東京スポーツなどによると、一茂さんは2019年に出演したフジテレビ系「ワイドナショー」に出演して、長嶋家の遺産について「もう遺産放棄している」と発言したという。
●法律上、相続の放棄は「生前」にできない
ただし、法律上は、被相続人の生前に相続人が相続放棄することは認められていない。つまり、「放棄する」という意思表示があっても、それだけでは法的効力は生じないのだ。
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内に相続を承認するか、放棄しなければならないとされている。(民法915条)。
相続放棄する場合は、家庭裁判所に申述書を提出しなければならない(民法938条)。そして、正式に放棄が認められた人は、初めから相続人とならなかったものとみなされる(民法939条)。
実際は、長嶋家で生前に「遺言書」が作られていた可能性もあるので、個別の事情は外部からはうかがい知れない。
ただ、遺産分配において最低限保証される「遺留分」については、生前に放棄することも可能であり、その場合は家庭裁判所の許可が必要となる(民法1049条)。
●昭和が本当に終わった
2025年は昭和元年から数えて100年目にあたり、「昭和100年」という言葉がメディアで盛んに使われている。
長嶋さんの訃報を聞いて、ありきたりな表現だが「昭和が本当に終わった」と思わずにはいられない。
戦後の日本に現れたスター選手が国民に残した「遺産」はあまりにも大きい。
弁護士ドットコムニュース編集部