ブラジルのサンパウロ大都市圏イタペセリカ・ダ・セラ市で、17歳の女子高校生が自宅に届けられたケーキを食べた後、体調を崩し死亡する痛ましい事件が発生しました。当初、原因不明とされていましたが、捜査の結果、被害者の同級生が毒物を混入させたことが判明し、警察に身柄を確保されました。犯行の動機は嫉妬や恐怖心であったと報じられています。このブラジルで起きた毒殺事件は、地元に衝撃を与えています。
事件発生から初診まで
事件は6月1日に発生しました。被害者のアナ・ルイーザ・デ・オリヴェイラ・ネーヴェスさんは、同日午後6時頃に帰宅。その1時間ほど前、午後5時頃に宅配業者によって自宅玄関に届けられていたケーキを口にした直後、体調の異変を訴え始めました。症状は嘔吐と下痢で、急速に悪化しました。
ケーキを受け取ったのはアナさんの妹でした。ケーキには差出人の名前は書かれておらず、「世界一可愛い君に心ばかりのプレゼントを」という手書きのメモが添えられていました。
容体が悪化したアナさんは、父親のシルヴィオさんによって地元の私立病院へ緊急搬送されました。医療機関では当初、食中毒と診断されました。薬物投与と点滴による治療が行われ、一時的に容体が安定したため、同日の夜に退院が許可されました。
事件の発端となった毒入りケーキと添えられた手書きのメモ
容体悪化と悲劇的な結末
しかし、翌日になってもアナさんの症状は改善しませんでした。自宅で意識を失っている状態が発見され、再び病院へ搬送されましたが、到着時にはすでに心肺停止の状態でした。残念ながら、そのまま死亡が確認されました。
医療報告書によれば、病院到着時のアナさんは酸素欠乏により皮膚が青紫色に変色するチアノーゼを起こしており、低体温状態でした。心拍と呼吸は確認されなかったとのことです。
加害者特定と同級生の意外な素顔
警察の捜査により、ケーキに毒物を混入させたのがアナさんの同級生であることが判明しました。さらに衝撃的なことに、この加害者少女は事件当日、アナさんの自宅に宿泊していたのです。
アナさんの父親であるシルヴィオさんは記者会見で、加害者少女の当時の様子について証言しました。「彼女は事件当日、我が家に泊まっていました。娘が体調を崩し、私が病院へ連れて行く場面も全て見ていたはずなのに、一切感情を表に出しませんでした。娘が亡くなった後でさえ、『大丈夫ですか』と私に声をかけ、抱きしめてきたほどです。娘とあれほど親しかった彼女に、まさか毒を盛るような真似をするとは、全く疑うことなど思いつきませんでした」と語り、深い悲しみと戸惑いをにじませました。
毒物混入の手口と捜査の進展
毒物が混入されたケーキは、地元の菓子店で購入された市販品でした。加害者少女は、このケーキに自ら手作りした白いブリガデイロ(ブラジルの代表的なチョコレート菓子)を飾り付けとして載せ、その上から粉末状の亜ヒ酸(ヒ素化合物)をふりかけたことが明らかになりました。亜ヒ酸はほぼ無味無臭であるため、古くから毒殺に用いられてきました。
ケーキの配送には、宅配アプリを通じて手配されたバイク便業者が利用されました。配達料は5レアル(当時のレートで約125円)でした。捜査官は、事件発生現場近くの防犯カメラの映像を分析し、バイク便のナンバープレートを特定。その業者に接触することで、差出人の住所を突き止め、加害者少女を特定することができました。
犯行の動機と過去の事件
事件後、警察の要請により、加害者少女は一時的に少年矯正施設に収容されました。捜査当局に対し、少女は「嫉妬心から毒を混入し、被害者に恐怖を与えようとした」と供述していると報じられています。
アナさんはこの少女による最初の被害者ではなかったことも判明しました。5月15日にも別の少女にメッセージ付きのケーキが送られ、その少女もケーキを食べた後に体調を崩して入院しましたが、幸い命に別状はありませんでした。警察はこの過去の事件と今回の事件の関連についても捜査を進めています。
ケーキ店の対応と影響
事件に使われたケーキを製造した菓子店は、当該商品の製造自体は認めつつも、被害者宅への配送には一切関与していないと強く明言しています。店の許可を得ずに第三者が配送を行ったことに対し、ブランドの名誉毀損であるとして強く非難しています。また、被害者家族への配慮を示すため、一時的に営業を停止することを決定しました。
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この痛ましい事件は、身近な関係における見えない悪意の存在、そしてSNSや宅配サービスが犯罪に悪用される可能性を示唆しており、社会に大きな衝撃を与えています。警察は引き続き捜査を続けており、事件の全容解明が待たれます。
出典: G1など