トランプ氏、ハーバード大学への「兵糧攻め」を強化 その真の狙いとは?

トランプ前米大統領が、米国の象徴的存在であるハーバード大学に対し、前例のない厳しい措置を次々と打ち出しており、米国社会に大きな混乱と波紋を広げている。単なる表面的な問題解決にとどまらない、より深い政治的・社会的な目的が隠されているのではないかという見方が浮上している。

[トランプ氏、ハーバード大学への「兵糧攻め」を強化 その真の狙いとは?トランプ前米大統領。ハーバード大学への厳しい措置を主導]

ハーバード大学への攻撃、その表面的な理由

トランプ陣営がハーバード大学を攻撃する理由として挙げているのは、主に以下の点だ。

  • 学内での反ユダヤ主義への対応の遅れや放置
  • リベラルなエリート主義に基づく、保守派に対する政治的偏見や攻撃
  • 政権が問題視する「多様性、公平性、包括性(DEI)」方針の実施
  • 米国の安全保障を脅かす中国共産党との深い関係

これらの理由は、確かに大学への圧力を説明する一因となり得る。しかし、連邦助成金の全面停止や留学生受け入れ資格の取り消しといった、大学の存続そのものに関わるような苛烈な手段は、「そこまでやる必要があるのか」という疑問を生じさせている。一見して、挙げられている問題と釣り合わないほどの強硬策に見える。

「兵糧攻め」の具体的な手段

ホワイトハウスは、ハーバード大学に対する「兵糧攻め」とも呼ばれる具体的な措置を矢継ぎ早に実行している。
まず、ハーバード大学への連邦研究資金のうち、26億ドル(約3800億円)以上を凍結した。さらに、今後の新規助成金の交付も停止し、大学と連邦政府の間で残っていた全ての研究委託契約を一方的に打ち切った。トランプ氏は、すでに予算化されていた約30億ドル(約4320億円)の研究助成金も取り消し、その資金を国内の職業訓練学校に振り分けるという発言までしている。

資金面だけでなく、留学生の受け入れに関しても厳しい制限を課している。全世界の米大使館や領事館に対し、留学希望者のビザ(査証)面接の新規受け付け停止を指示。中でもハーバード大学に関しては、ビザ申請者をより厳しく審査するよう命じた。極めつけは、外国人がハーバード大学に入学するための米国入国を禁止する大統領布告に署名したことだ。

また、米国務長官は、中国共産党とつながりがあり、重要分野で研究を行う中国人留学生のビザを「攻撃的(aggressively)」に取り消す方針を明らかにしている。外国人留学生、特に中国人留学生は、学費が全額支払われるケースが多く、大学経営にとって重要な収入源であり「上得意」である。トランプ氏はハーバード大学の留学生枠を「15%に制限すべき」と主張するなど、外国人留学生受け入れ資格そのものを取り消す動きに出ている。

攻撃の背景にある「真の目的」とは

このような極端な措置の裏には、単なる大学改革を超えた、米国社会の根本的な変革を目指す深い目的が隠されている可能性が指摘されている。トランプ陣営は、リベラル派の影響力が強い米国の学術界全体を「左翼の巣窟」と見なしており、その中でも最も象徴的な存在であるハーバード大学を徹底的に叩くことで、米国の知的なエリート層やアカデミア全体の権威を失墜させ、その方向性を変えようとしているのかもしれない。

「兵糧攻め」という手段は、大学の経済基盤を揺るがし、教育・研究活動に打撃を与えることで、大学の自律性や独立性を奪い、政権の意向に沿わせようとする狙いがあると見られる。これは、単に特定の課題(反ユダヤ主義など)を解決するためではなく、学術界全体の思想や方向性を保守的なものへと転換させるための、より広範な戦略の一環である可能性が高い。

結論

トランプ前大統領によるハーバード大学への一連の攻撃は、表面的な理由だけでは説明しきれないほどの厳しさを見せている。巨額の研究資金凍結や留学生受け入れ制限といった「兵糧攻め」は、ハーバード大学という象徴を狙い撃ちすることで、米国の学術界全体、ひいては米国社会そのものを根本から変革しようとする、より深い政治的な目的を示唆している。この動きが今後、他の米大学や教育制度にどのような影響を与えるのか、注視が必要である。