世界中で大きな話題となった中国のパラグライダー「奇跡の生還」劇。高度8589メートルからの生還として報じられましたが、現在、その映像の一部にAIによって生成されたものではないかという疑惑が浮上しています。この中国 パラグライダー AI生成映像の真偽を巡り、専門家からも指摘が出ています。
世界が注目した「奇跡の生還」報道
中国国営メディアは5月28日、甘粛省でパラグライダー中の男性が上昇気流に乗り、高度8589メートルまで到達後、無事生還したと伝えました。「やっと雲から出たぞ!」「生きて帰れると…とても安心しました」と語る男性の様子は、アメリカやイギリスを含む各国のメディアで大きく取り上げられ、世界中でパラグライダー 奇跡の生還のニュースとして報じられました。
中国で報じられた、高高度からのパラグライダー生還劇に関する映像。AI生成疑惑が浮上している。
映像に浮上した「AI生成」疑惑
しかし、ロイター通信は最近、画像を調査したあるセキュリティー会社の分析結果として、この動画の最初の5秒間がAI生成された可能性が「ほぼ確実」であると報じました。この指摘により、広く拡散された映像の信頼性に疑問が投げかけられています。
専門家が指摘する不自然な点
疑惑が指摘される具体的な根拠は複数あります。一つは、映像内で確認できるヘルメットの色です。問題視されている冒頭の映像では、男性が着用しているヘルメットは白く見えますが、その後に続く映像では黒のように変化しています。
さらに不自然な点として、疑わしい映像では男性の足が宙ぶらりんの状態であるのに対し、その後の映像では落下防止用のハーネスにしっかりと座っているように見えることも挙げられています。
日本国内の専門家もこの映像に注目しています。生成AIに詳しい国立情報学研究所の越前功教授は、このような映像は「すぐに瞬時に(AIで)作れてしまうと思う」と述べ、特に距離をとって撮影されたような映像は、リアルで撮るには多大なコストがかかり、その視点自体が「違和感がある」と指摘しています。これらの点から、映像の一部が人工的に作られた可能性が高いとの見解を示しています。
高まる情報検証の必要性
AI生成による偽情報の拡散が懸念される中、越前教授はメディアや情報を受け取る側に対し、「映像を見てうのみにするのではなく、他の状況証拠や他の組織の見解、他人のコメントなど総合的に判断する」ことの重要性を訴えています。技術の進化により、現実と見分けがつかない映像が容易に作成できるようになった現代において、情報の検証はますます不可欠となっています。
結論:情報リテラシーと検証の時代へ
世界を驚かせたパラグライダーの生還劇は、AI技術の進化がニュース報道にもたらす影響と、情報リテラシーの必要性を改めて浮き彫りにしています。報道される映像の真偽を見極めるための検証が今後さらに重要となり、私たち一人ひとりが情報の受け取り方を意識する必要があります。