政府・与党は12月9日までの今国会の会期を延長しない方針を決めた。最重要課題となっている日米貿易協定の承認案の会期内成立に見通しが立ったことに加え、野党が首相主催の「桜を見る会」への追及を強めている。政府・与党はこうした事情を踏まえ、早期に国会を閉じて来年の通常国会に向け、態勢を立て直す狙いもあるとみられる。
「会期の延長は考えていない。会期内の法案成立を目指すことに尽きる」
自民党の森山裕国対委員長は27日、東京都内で与党幹部による会談後、記者団にこう強調した。
今国会では、菅原一秀前経済産業相と河井克行前法相が事実上更迭された影響で、衆院外務委員会で承認案の審議が停滞した。日米両政府は来年1月1日の協定発効を目指すだけに、与党には会期内の承認を危ぶむ声もあった。
焦点の憲法改正手続きを定めた国民投票法改正案も、21日の衆院憲法審査会での採決が見送られ、会期内の成立が困難になった。与党の一部には、国会の審議日程に余裕を持たせるため、会期の小幅延長を求める声があった。
しかし、19日に承認案が衆院を通過して以降、参院での審議は滞りなく進んでおり、十分な審議時間を確保できる見通しとなった。
また、今国会でも改憲議論は停滞した。与党への攻勢を強める主要野党は、会期延長しても改正案の採決に応じる可能性は低いとみられる。国会では改憲議論を与野党合意の下で運営する原則もあるだけに、自民党の二階俊博幹事長は、主要野党が欠席したまま採決する可能性を「そんなことはしない」と否定した。
会期延長のメリットが乏しくなる中で、決定打となったのが「桜を見る会」の騒動だ。野党は「追及本部」を立ち上げ、招待者名簿の破棄に使われた大型シュレッダーの視察を行うなど、徹底的に追及する姿勢を崩さない。「桜を見る会」の影響もあり、産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)が16、17両日に実施した合同世論調査では、安倍晋三内閣の支持率が前回調査より6・0ポイント減の45・1%となった。
野党は法案審議が続く参院で予算委員会の集中審議を求めているが、政府・与党は応じない構えだ。野党は審議拒否もちらつかせるなど、攻勢を強めている。
ある政府関係者は「『桜を見る会』の危機管理は大失敗」と対応が後手に回ったことを悔やんだ。(大橋拓史)