【独自取材】中古車買取「カートップ」大規模詐欺の闇:80名超被害、計画倒産疑惑を追う

中古車買取業界で、またしても大規模なトラブルが発生しました。東京都板橋区に本社を置く「カートップ」に対し、80名以上の被害者から総額4億2000万円を超える損害が報告されています。これは単なる経営不振によるものではなく、当初から買取代金を支払う意思がない悪質な中古車 買取 詐欺ではないかとの疑惑が深まっています。

「カートップ」は2021年12月に設立された比較的新しい会社です。しかし、その背後には過去に同様のトラブルを繰り返してきた人物の影が見え隠れしており、「計画倒産」の可能性が指摘されています。被害者の声を聞き、その巧妙な手口と組織の実態に迫ります。

愛知県在住のある被害者は、人気車種であるトヨタ・ヴェルファイアの売却を検討し、「MOTA」という一括査定サイトを利用しました。複数の業者から入札がある中で、「カートップ」は2位の業者よりも50万円も高い査定額を提示したため、この被害者はすぐに契約を結びました。車と書類を「カートップ」に引き渡したのは5月15日、入金予定日は5月23日でした。

しかし、入金を待つ間、5月19日に突然、「カートップ」の弁護士事務所から破産手続き開始に関する受任通知が送られてきたのです。被害者は「19日に通知が出るなら、少なくとも15日までに破産手続きが決まっていたはず。これは計画倒産ではないか」と強い怒りを覚えています。被害者が「カートップ」本社や担当者に連絡を試みましたが、一切繋がりませんでした。筆者の元には多数の被害報告が寄せられ、被害者グループラインには現在50名以上が参加しています。

被害の実態と巧妙な手口

取材を進める中で、「カートップ」の悪質な手口が明らかになってきました。他の多くの中古車業者が証言するところによれば、「カートップ」は2月頃から相場よりも明らかに高い価格で車を買い取り続けていました。これは、実績を作り、ウェブサイトなどで高評価のクチコミを集めるための戦略だったと考えられます。4月上旬までは入金が行われていたものの、ゴールデンウイーク明け頃からSNS上で未入金を訴える声が散見されるようになりました。高額査定で顧客を引きつけ、車と書類だけを入手し、入金直前に破産通知を出すという、周到に計画された詐欺スキームが疑われます。

中古車買取詐欺事件で閉鎖されたカートップ本社ビル(東京都板橋区)中古車買取詐欺事件で閉鎖されたカートップ本社ビル(東京都板橋区)

組織の変遷と「計画倒産」の影

「カートップ」の登記簿上の代表取締役は野呂佳成氏という人物ですが、関係者によると野呂氏が実際に姿を現すことはほとんどなかったといいます。電話で話したことがある出入り業者でさえ、「社長の番号にかけても違う声の人物が出ることが何度かあった」と、その不気味さを語ります。

実は、「カートップ」による買取代金未入金の被害は、今回が初めてではありません。その始まりは、札幌市を本拠地としていた「カートップ」のさらに前身である「くるなび」という会社に遡ります。「くるなび」は2012年8月に設立され、登記上の代表取締役にはF氏という人物の名前がありますが、実質的な経営は野呂氏が行っていたとされています。

中古車販売業界の関係者によれば、野呂氏とF氏が犯罪まがいの行為を始めたのは2010年頃からだといいます。当時経営していた別の会社でも、ネット掲示板には「買い取りしてもらったがお金が振り込まれない」という相談が残されています。当時から野呂氏の指示で買い取り車を回していたのがF氏でした。

その後に立ち上げた「くるなび」では、F氏の暴行事件による融資打ち切り、業者オークションからの出禁、未入金被害者からの民事訴訟など、多数のトラブルを起こしていました。代表や会社名をその都度変更しながら活動を続け、今回の「カートップ」もこの二人が深く関わっています。

「くるなび」の車両買取契約約款には不審な点が多々あり、難癖をつけて買取金額を減額したり、一方的に契約を解除したりするなど、消費者契約法に抵触する内容も含まれていました。2018年5月17日には、適格消費者団体である特定非営利活動法人消費者機構日本より、改善を求める申入書が送付されています。

さらに、野呂氏の側近とされるF氏は、過去に周囲に驚くべき発言をしていたと、当時を知る別の中古車販売業者が証言します。F氏は「ヤンチャな風貌で、取り巻きもそういった人間が多かった」とし、「当時から『億の金を集めて計画倒産するのが俺の夢だ!』と周りに吹聴していました。当時は何を言ってるんだ?と思っていましたが、今回の事件を聞いてゾッとしました。『カートップ』がまさに計画倒産じゃないかと」と語っています。

F氏は「くるなび」とは別に、札幌市手稲区でも中古車販売店を経営しており、非常に悪質な手口で月に80台もの車を販売していたといいます。顧客とのトラブルが相次ぎ、広告媒体との契約も難しくなると、名義人を切り捨て、新たな名義人を探すという手口で8年ほど店舗経営を続けていました。

警察の本格捜査と車両の行方

今回の「カートップ」を巡るトラブルに対し、各地の警察も本気の対応を見せています。愛知県警と警視庁は既に詐欺罪での被害届を受理し始めており、実際に捜査によって所有者名義や所在地が特定されている被害車両も出ています。中には、弁護士立ち会いのもとオーナーに車両が返還されたケースも数台あると聞かれます。

「カートップ」の公式サイト(2025年5月23日に閉鎖)で、2025年4月オープン予定として紹介されていた埼玉県所沢市の新店舗予定地には、現在30台前後の車両が保管されています。これらの車両の中には、被害者から買い取られたものが含まれている可能性が高いです。これらの車には全て弁護士による告示書が貼られ、移動を禁じられていましたが、筆者が現場を訪れた際には、地面に移動の形跡が見られ、告示書が剥がされて別の車に貼り替えられているものもあったといいます。これは、証拠隠滅や車両の不正な移動を示唆しており、事態の悪質性を物語っています。

筆者はこれまで数百件の詐欺的案件を取材してきましたが、今回驚くのは警察の初動対応の速さです。愛知県警がいち早く被害届を受理し、それに警視庁も続きました。埼玉県警や千葉県警など一部では被害届の受理を保留している署もありますが、おそらく間もなく受理に向けて動くと思われます。複数の会社を舞台に詐欺的行為を繰り返し、数百名に及ぶ車のオーナーを苦しめてきた悪質な犯罪の全貌が、今回の警察の捜査によってしっかりと解明されることが期待されます。[internal_links]

同様の被害を防ぐための対策

こうした中古車売買でのトラブルに巻き込まれないためには、いくつかの対策を知っておくことが重要です。最も確実なのは、車の引き渡しと同時に現金(または目の前での口座入金)を受け取る形式のお店を選ぶことです。これが最も安全なシステムと言えます。

さらに安全性を高めるためには、第三者機関が入金の確認を行った後に、買取店に書類と車を引き渡す「エスクローサービス(取引保全)」を導入している中古車店や一括査定サイトを利用することも有効です。[internal_links]

一般的に、車を引き渡した後の入金は翌日~5日以内と設定されることが多いですが、この標準的な入金予定日についても事前に確認し、あまりに遅すぎる設定や曖昧な約束には注意が必要です。これらの点を理解しておけば、同様のトラブルに巻き込まれるリスクを大幅に減らすことができるでしょう。

「カートップ」による大規模中古車 買取 詐欺事件は、中古車売却を考えている多くの人々にとって他人事ではありません。高額査定に飛びつく前に、業者の信頼性や契約内容を十分に確認することが何より重要です。今回の事件が、二度と同様の被害が繰り返されないための教訓となることを願います。

情報源:FRIDAYデジタル
https://news.yahoo.co.jp/articles/567ee00b56907d57006a8618fad66a15375b3c77