世界平和統一家庭連合(旧統一教会)に対し、東京地裁が宗教法人法に基づく解散命令を出したのが3月25日。教団は即時抗告したため高裁での審理を待つことになり、実際に宗教法人が解散し、財産が賠償などに充てられる精算手続きが始まるまでには数ヵ月から半年以上かかるとみられています。こうした状況下で、旧統一教会が財産を韓国に移行しているのではないかという疑惑が浮上しています。20年以上にわたり旧統一教会問題を取材するジャーナリスト、鈴木エイト氏が現状を明かしました。
「5月12日から7月28日まで、土日を除く平日に毎日約300人の信者が韓国へ渡航する計画があるようです。このペースだと、合計で約2万1000人が渡韓することになります。表向きの理由は、韓国に建設された『聖地』である天苑宮の入宮式に参加できなかった日本の信者を対象とした研修とされています」
旧統一教会の問題を長年追及するジャーナリスト、鈴木エイト氏
「渡航は概ね2泊3日の予定で、当初は航空券、宿泊、食事代などが日本の旧統一教会によって全額負担され、信者の負担は韓国での修練費(数千円)のみという話でした。しかし、実際には信者が15万円ほどを負担しているとの情報もあります。もしそうであれば、実費の5万円を差し引いた一人あたり10万円が“手数料”として関連会社を経由し韓国本部に支払われることになります。これは、日本本部にプールされている現金を韓国本部に移動させるための真の狙いではないかと指摘されています」
財産移転疑惑と大規模渡航
“仲介料”とされる10万円が何に使われるのかについて、鈴木氏は解説します。解散命令の決定文書によると、2期前の期末時点で旧統一教会は820億円もの現預金を保有しており、教会施設などの不動産と合わせると総資産は1200億円以上に上ります。安倍元首相の銃撃事件以前は「海外宣教援助協力費」などの名目で年間300~500億円という巨額の資金が韓国へ送金されていましたが、現状ではそれが困難になっています。そのため、解散命令が確定する前に手を打ったと考えられます。
「韓国へ渡航する信者の旅行費用を高めに設定し、その差額を韓国本部に移すという手法です。2万1000人から10万円ずつ徴収すれば、単純計算で21億2000万円になります。かつては信者に外為法に抵触しない金額、例えば100万円が入った封筒を持たせて韓国の統一教会職員が空港で回収するという方法も行われていたようですが、現在ではそれが発覚すれば即座に問題となります。それより、渡航費用に10万円を上乗せするという、ある種の合法的なマネーロンダリングに近い行為の方が安全だと判断したのでしょう」
いまだ行われる霊感商法の実態
旧統一教会と資金問題といえば、いわゆる「霊感商法」ですが、これは現在も行われているのでしょうか。
「いわゆる霊感商法である先祖解怨は、韓国では今も行われているようです。日本の宗教本部は『全く関知しておりません』という姿勢ですが、私が把握している限り、信者が韓国で献金する行為は並行して行われています。先祖解怨は『先祖何代でいくら』という方式で、何代も遡ると1500~2000万円にもなることがあります。『中心霊の御祓い解怨もしなきゃならない』とか、『中心悪霊が13体いる』など、様々な理屈をつけて高額な献金を求めています。これも霊感商法に他なりません」
「外為法に抵触するため、韓国には100万円以上の現金を持って行くことはできません。そのため、先祖解怨は数回に分けて韓国の教団本部にある教会施設で儀式を行います」
解散命令後の財産はどうなるのか
旧統一教会の所有する不動産はどうなるのでしょうか。旧統一教会被害者の集団調停による請求金額は60億円余りで、今後新たな被害者が現れたとしても、多めに見積もって200億円あれば賄える金額になると考えられます。旧統一教会の所有財産が不動産を含めて1200億円だとすると、残りは約1000億円となります。教会施設などの不動産も残る見込みです。
「旧統一教会側は、『解散命令が確定したら、教団が持つ財産や信徒が通う教会などの不動産は全て国に没収される』と主張して信者に動揺を与えていますが、これはデマです。被害者への賠償は現金で賄えます。不動産は信教の自由保護の観点から、賠償金が預貯金で賄えない場合にのみ、売却されて現金化されます」
宗教法人法第50条によると、「精算後の宗教法人の財産は①規則で定めるところによる。②規則に定めがないときは、他の宗教団体または公益事業のためにその財産を処分することができる。③前二項の規定により処分されない財産は、国庫に帰属する公益事業、地方公共団体が使用し、国庫に帰属する」と定められています。旧統一教会の文化庁への届け出によれば、「法人の解散に伴う残余財産は、国もしくは地方公共団体または他の宗教法人のうち、責任役員会及び評議員会議で3分の2以上の議決で選定したものに帰属する」と記載されています。
政治との関係性:トランプ氏から国内政治家まで
鈴木氏によると、旧統一教会の関連団体であるUPF(天宙平和連合)が、旧統一教会の解散命令阻止に向けた圧力をかける可能性があるといいます。UPFが教団と共催したイベントには、ドナルド・トランプ前大統領(78)がビデオメッセージを寄せています。
「トランプ政権がホワイトハウスに新設した信教の自由を扱う部門のトップに就任した宗教庁の顧問、ポーラ・ホワイト氏は旧統一教会のシンパです。ホワイト氏は天苑宮のオープニングセレモニーや合同結婚式にも参列していました。旧統一教会側は政府の要人や政治家に多額の献金をしていると韓国のメディアが報じています。ホワイト氏にもかなりの額の資金が流れている可能性があります。実際に韓国では、韓国の旧統一教会幹部が『日本やアメリカでは政治家へのギャラが決められている』と話しているという報道もありました」
「トランプ大統領も旧統一教会関連団体であるUPFインターナショナルから3回に分けて講演料2億5000万円を受け取ったと報じられており、UPF側もトランプ大統領に講演料として3億円を支払ったことを認めています」
この夏の参議院選挙で、旧統一教会は何らかの動きを見せるのでしょうか。
「NHKから国民を守る党の浜田聡氏(48)が全国比例で出馬予定ですが、彼は旧統一教会関連のイベントに出演し、国会で旧統一教会に有利になる質問を行っています。旧統一教会は浜田氏に組織票を入れるのではないかという話があります。また、政治団体『日本の家庭を守る会』代表で小笠原家庭教会を主宰する小笠原裕氏(62)が参院選に千葉県選挙区から出馬するようです」
参議院選挙で自民党が過半数を獲得できなかった場合、石破茂首相が引責辞任すると見られています。ポスト石破として高市早苗氏(64)の名前が挙がっていますが、旧統一教会はこの状況をどう見ているのでしょうか。
「高市氏には以前から旧統一教会側がアプローチしていたと言われており、熱烈に応援されていました。スパイ防止法制定などの政策が勝共連合の思想と一致し、彼女の復古主義的な思想も旧統一教会の主張とかなり近いところにあります。高市氏が相手にしているかは不明ですが、旧統一教会としては高市氏に総理総裁になってもらい、『解散命令請求を取り下げてほしい』という期待はあると思います」
韓国での動き:韓総裁への出国禁止処分
韓国では旧統一教会にとって衝撃的な出来事がありました。韓国のソウル南部地検は5月24日までに、韓鶴子(ハン・ハクチャ)総裁(82)を出国禁止処分にしたのです。その理由は何でしょうか。
「実際、韓鶴子総裁が出国の際に空港で止められたという情報があります。『世界巡回巡礼に行こうとした』と主張していますが、検察は国外逃亡の可能性も疑っているのかもしれません。検察は旧統一教会の元幹部がナンバー2だった際に関係者を通じて、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領(64)の妻・金建希(キム・ゴンヒ)氏(52)側にダイヤモンドのネックレスやブランドバッグを贈ったとして請託禁止法違反容疑などで捜査しています」
「旧統一教会側は『元幹部の個人的な行動』と主張していますが、韓国政府のカンボジアでの事業に入り込み、政府開発援助(ODA)を引き出すために尹大統領側に便宜を図る依頼をしていた可能性が疑われています」
鈴木氏が指摘する「信者を使った多額の教団資金の移動」は実際に行われているのか、今も霊感商法が日韓で行われているのか?旧統一教会に質しましたが、期日までに回答はありませんでした。旧統一教会にとって激動の年となった2025年、今後の動きを注視する必要があります。
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参考資料
- FRIDAYデジタル via Yahoo!ニュース