「ルフィ」事件幹部、初公判で起訴事実認める – 闇バイト勧誘の役割に焦点

2022年から23年にかけて全国で相次いだ、指示役「ルフィ」を名乗る人物らによる一連の広域強盗事件で、実行役の勧誘などを担ったとされるグループ幹部、小島智信被告(47)の裁判員裁判が1日、東京地裁(板津正道裁判長)で開かれ、小島被告は起訴内容を全面的に認めた。検察側は冒頭陳述で、小島被告が「闇バイト」を通じて多数の実行役を継続的に集め、強盗事件の遂行に不可欠な役割を果たしたと指摘し、その責任を追及する姿勢を示した。

裁判の開始と被告の立場

この一連の事件を巡っては、23年2月にフィリピンから強制送還されたグループ幹部の渡辺優樹被告(41)、今村磨人被告(41)、藤田聖也被告(41)と共に、小島被告も逮捕・起訴されている。今回の公判は、これら主要な4被告の中で初めて開かれたもので、事件の全体像解明に向けた動きとして注目される。小島被告が初公判で起訴事実を認めたことで、今後の裁判は量刑が主な争点となる見通しだ。

検察側の主張:組織内での役割

検察側は冒頭陳述で、グループの始まりが17年にタイで作られた特殊詐欺拠点にあり、翌18年にフィリピンに移転した後に小島被告が加わった経緯を説明。小島被告は、詐欺のノウハウ習得のために現地を訪れた今村被告に指導を行う一方、組織メンバーへの給与支払いを管理する「金庫番」の役割も担っていたと述べた。

ルフィ強盗事件における指示役・実行役の組織構造図ルフィ強盗事件における指示役・実行役の組織構造図

その後、フィリピン当局に摘発され、入管施設に収容されたものの、今村被告が22年3月頃から施設内から「ルフィ」として強盗の指示を始めたと主張。検察側は、渡辺被告を通じて今村被告からの依頼を受けた小島被告が、自身でX(旧ツイッター)に闇バイトの募集を投稿したり、闇バイト求人業者に依頼したりすることで強盗の実行役を確保し、藤田被告に紹介していたと具体的に述べ、小島被告の役割の重要性を強調した。

弁護側の主張:限定的な役割

一方、弁護側は冒頭陳述で、小島被告が多額の借金を抱えてグループに加わり、その借金を肩代わりしてくれた渡辺被告からの依頼を断れずに実行役の勧誘を行ったと説明。強盗計画の詳細については知らされておらず、小島被告の役割はあくまで「限定的だった」と訴え、情状酌量を求めた。弁護側は、被告が組織内で置かれていた状況や、指示内容を完全に把握していなかった点を重視している。

被告の起訴内容

小島被告は、22年10月から12月にかけて、東京都や山口県で発生した住宅強盗事件のうち、現金や金塊などが強奪された三つの事件において、実行役の勧誘などを行い強盗致傷ほう助などの罪に問われている。さらに、19年には他の仲間と共謀し、フィリピンから日本の高齢者らに嘘の電話をかけ、現金計約5400万円をだまし取った特殊詐欺事件でも起訴されている。

今後の見通しと他の被告の状況

小島被告に対する判決は、今月23日に言い渡される予定となっている。事件の指示役として強盗致死罪などに問われている渡辺、今村、藤田の他の3被告については、公判前整理手続が続いている段階であり、現時点ではまだ公判開始の具体的なめどは立っていない。事件の全容解明には、今後開かれるとみられる彼らの裁判の行方が鍵となる。

「闇バイト」とは

「闇バイト」とは、主にSNS上で「短時間で高収入」「未経験者歓迎」といった言葉で募集され、応募した若者などが報酬と引き換えに特殊詐欺の「受け子」「出し子」や、今回のような強盗などの犯罪行為の実行役を担うものを指す。実行役は指示役に個人情報を握られて支配下に置かれたり、約束された報酬を受け取れず「使い捨て」にされたりするケースが多い。社会問題化しており、警察は身分を隠して応募する仮装身分捜査を導入するなど、政府による対策強化が進められている。