「ミニマムアクセス米」とは?小泉農水相が活用検討、備蓄米枯渇と国民の不安

江藤前農水大臣の「米を買ったことがない」失言からわずか2週間後、小泉進次郎新農水大臣が主導した随意契約による備蓄米放出により、大手スーパーの店頭に安価な米が並び始めました。その効果もあってか、他の小売店でも品薄だった米が見られるようになったと言われています。この迅速な対応は「小泉効果」として一定の評価を得ていますが、放出された備蓄米は残量が3分の1となり、早くも“弾切れ”が囁かれています。国民が米価高騰に苦しむ中、次の対策が急がれています。

備蓄米放出やミニマムアクセス米の活用に言及した小泉進次郎農水大臣備蓄米放出やミニマムアクセス米の活用に言及した小泉進次郎農水大臣

そんな中、小泉農水相は国会で「(備蓄米を)仮に全部放出して、その後どうするかについては、ミニマムアクセス米の活用も可能だ」と発言しました。さらに会見では「ミニマムアクセス米も含めて、あらゆる選択肢を考えて、コメの価格の高騰をなんとしても落ち着かせる」と述べ、外国産米の政府による緊急輸入もあり得るとの認識も示しています。ここで追加の切り札として言及された「ミニマムアクセス(MA)米」とは一体何でしょうか。

「ミニマムアクセス米」とは何か?

ミニマムアクセス米とは、日本が1995年から輸入している一定量の米を指します。これは、1986年から1993年にかけて行われた多国間貿易交渉である「GATTウルグアイラウンド」の合意に基づき、国内消費量に影響を与えない範囲で最低限輸入を義務付けられたものです。1999年に米の輸入制限は撤廃され、関税が課されるようになっても、このMA米の輸入は継続されています。

MA米は、国内の米市場価格に影響を与えないよう、政府が一元的に管理しています。現在の年間輸入量は玄米ベースで約77万トンに上り、主にアメリカやタイ、中国などから輸入されています。この米は、主に加工用(例えば、米菓や味噌、醤油などの原料)や海外への政府開発援助(ODA)として利用されています。

MA米を巡る議論と過去の事件

ミニマムアクセス米は、これまでも度々物議を醸してきました。2024年の日本の米の年間需要量が約700万トンであることを考えると、77万トンという輸入量は全体の約11%に相当し、無視できない割合です。このため、食料自給率の向上や財政負担の観点から、輸入量を削減すべきだという議論が存在します。また、加工用や海外援助用としても消費しきれていないMA米があり、政府もその「扱いに苦慮している」状況だと言われています。

さらに、MA米には「三笠フーズ事件」という苦い記憶が結びついています。これは2004年から2007年頃にかけて発覚した事件で、米卸売加工会社「三笠フーズ」が、カビや基準値を超える残留農薬が検出された「事故米」(工業用のり原料として農水省から安価で購入)を、食用として不正に転売し、学校給食などに流通させていたものです。この事件では、経営者が実刑判決を受け、当時の農水大臣と事務次官が辞任に追い込まれました。この事故米の中には国産米も含まれていましたが、MA米由来のものもあったとされています。

安全性への国民の懸念

こうした背景から、小泉農水相がMA米の活用を示唆したことに対し、SNSやインターネット掲示板上では早速懸念の声が上がっています。
《ミニマムアクセス米(毒米)を日本人に食わせるつもりか》
《横文字にして危険性をぼかしているだけだ》
《三笠フーズ事件を忘れたのか?主食にするのは危険だ》
など、「安全性」に対する不安や、過去の事故米問題との関連を指摘する意見が見られます。

米価高騰という緊急事態において、政府がMA米という「あらゆる選択肢」を検討するのは理解できます。しかし、その歴史や過去の事件、そして国民の根強い不安を考えると、その取り扱いには極めて慎重な説明と対応が求められます。その安全性については、獣医師・ジャーナリストの星良孝氏のような専門家も注目しており、今後の議論の焦点となるでしょう。

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