加齢による筋肉量の低下と、それに起因するフレイルを防ぐために欠かせないたんぱく質ですが、なかでもたんぱく質を構成する「バリン」「ロイシン」「イソロイシン」という3つの必須アミノ酸の働きこそが重要だと、よこはま土田メディカルクリニック院長の土田隆氏は指摘します。
一般にはあまり耳慣れない「バリン」「ロイシン」「イソロイシン」の知られざる健康効果について、土田氏の著書『医者が考案した たんぱく質をたっぷりとる長生きスープ』から一部を抜粋・編集する形で解説します。
■要介護や認知症の原因となる「たんぱく質不足」
私たちの生命維持に欠かせない「三大栄養素」とは、たんぱく質、脂質、糖質です。なかでもたんぱく質を英語では「プロテイン」といいますが、これはギリシャ語で「第一のもの」を表す「プロティオス」という言葉からきていることをご存じでしたか? それくらい、たんぱく質は人間にとって大切なものなんですね。
たんぱく質は、人の皮膚や爪、髪の毛のほか、筋肉、臓器、血管などのもとになっています。たんぱく質によってできた組織の総重量は、体重の約30〜40%。筋肉にいたっては、なんと水分を除いた約80%がたんぱく質によって作られているんです。
当然ですが、たんぱく質が不足すると筋肉が衰えてしまいます。それによって起こる問題は様々ですが、まず「歩く」「立つ」「座る」などの運動機能が低下します。
その結果、家に引きこもりがちになり、趣味の集まりなど人とのつながりがなくなってしまいます。段々と孤独を感じるようになり、気力まで衰えていき、心身ともにバランスをくずすという負のスパイラルに陥ってしまうのです。
さらに怖いのが、大きな事故やケガにつながりかねないことです。
筋肉不足が原因でふらつき、転倒事故を起こしてしまえば、そのまま要介護になるリスクだってはらんでいます。また、最近の研究では筋肉が認知機能に影響を与えることもわかってきました。
認知症予防の観点からも、寝たきりにならずに自分の足で歩き続けるためにも、たんぱく質は欠かせません。たんぱく質をとることは、要介護予防、転倒予防、認知症予防、免疫力向上につながります。
60代、70代、80代……もちろん若い人にとっても「たんぱく質不足」は、体・心・脳に直接影響を与え、残りの人生を大きく揺るがす重大な問題なのです!