日本の刑罰で死刑の次に重い「無期懲役」。現在、約1700人が収容されていますが、近年の厳罰化の流れを受けて仮釈放が大幅に減少し、刑務所内で最期を迎える「獄死」のケースが増加しています。社会からはほとんど知られていない、“死刑を免れた男達”が置かれている厳しい現状を追いました。
厳罰化で加速する無期懲役囚の終身刑化
長期の受刑者を約500人収容する宮城刑務所では、そのおよそ3人に1人が無期懲役囚です。彼らの間では、事実上の「終身刑化」が顕著に進んでいます。過去10年間で宮城刑務所からの無期懲役囚の仮釈放は、わずか3人にとどまっています。これは、刑法の改正など厳罰化の傾向が強まる中で、仮釈放の判断がより厳格になっている現状を如実に示しています。高い塀に囲まれた刑務所での暮らしは、多くの無期懲役囚にとって、文字通り一生続くものとなりつつあります。
宮城刑務所の高い塀と施設の外観。仮釈放が減少する無期懲役囚の収容状況を示す一端。
城跡の土塁の上に造られたという宮城刑務所の威圧的な高い塀は、受刑者を社会から隔絶しています。刑務所に棟続きとなっている仙台拘置支所には、全国に7か所存在する死刑場の一つが置かれており、過去にはオウム事件の死刑囚の執行も行われました。このような場所で、多くの無期懲役囚が仮釈放への希望を絶たれ、長い年月を過ごしているのです。
増加する“獄死”と高齢・病気受刑者の現実
仮釈放の減少と受刑者の高齢化に伴い、刑務所内で死亡する「獄死」が増加しています。宮城刑務所の病棟は、まるで介護施設のような様相を呈しています。霊安室からわずか10メートルという近距離にあるこの病棟には、重篤な状態にある無期懲役囚が多く収容されています。
取材班が病棟で話を聞いた80代後半の無期懲役囚は、殺人罪で30年服役しています。「被害者は3人」と淡々と語る一方で、「刑務所から出たら何をやりたいか」との問いには「釣り」と答えました。脳の疾患で自傷行為が激しいため、ミトンを付けられている無期懲役囚もいます。
刑務所の看護師は、当初は受刑者たちに恐怖を感じていたものの、今では「普通の患者さんと同じように接している」と話しました。殺人罪で無期懲役の人がいることも理解した上で、医療従事者として彼らのケアにあたっています。しかし、施設内の医療体制や介護の質は十分とは言えず、高齢化・重病化する受刑者への対応は大きな課題となっています。
まとめ
日本の無期懲役制度は、厳罰化の進行により事実上の終身刑へと性質を変えつつあります。仮釈放が極めて困難となる中で、多くの無期懲役囚が刑務所の壁の中で人生を終える「獄死」の現実が浮き彫りになっています。高齢化が進む受刑者への医療や介護の課題と合わせ、無期懲役囚の処遇を巡る議論は、今後の日本社会が向き合うべき重要な課題となっています。